TRAVEL

2021.07.21
TRAVEL

これからの旅のカタチ
本田直之氏インタビュー

これからの旅は非日常としての旅ではなく、日常の延長線にありながらも心をリフレッシュさせ、豊かにしてくれる「極上の日常旅」。"自分らしく楽しむ"がキーワードとなる、新しい旅スタイルをご紹介します。
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  • Ayako Tajiri
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旅こそが人生を豊かにする

  • 経営者、ベンチャー投資家、ベストセラー作家と、さまざまな表情を持つ本田直之さん。旅が日常という生活を送り続ける本田さんが今目を向けているのは、日本の「地方」。特色豊かなレストランや生産者を訪ね歩くなかで発見した、国内旅の魅力を伺いました。


  • 佐賀県武雄市で行われた、新しい旅行体験を提案するプロジェクト。迎えたのは「傳」の長谷川在佑シェフ。


  • 東京とハワイの二拠点生活を送り、一年の大半をヨーロッパ、オセアニア、アジアと世界中への旅に費やしてきたという本田直之さん。海外渡航が難しくなった現在、どう過ごしているのかを聞いてみると、生活の中に旅があるのは変わらないと言う。

  • 「コロナ前も後も、旅は僕の日常には欠かせないもの。今日もちょうど東北の旅から帰ってきたばかりです。僕の旅は食が中心で、そこでしか食べられないものや、その土地ならではの食材を作る生産者、食べたいもの、会いたい人に出会うために旅をしているようなものですね。あとは大好きなサウナめぐりも外せません」


日本各地の多様な素晴らしさを伝えたい

  • 各地の米や水によって、土地ならではの旨みを生み出す日本酒や、風土が生んだ郷土の食。その魅力に気づいたのは、海外を旅してきた経験によるものだという。

  • 「ヨーロッパの地方を回ると、ものすごく土地の特色が残っているんですよね。例えば日本と同じように南北に長いイタリアでは、北と南ではまったく違う国のよう。実際に1861年に統一されるまでは違う国だったから当然なのかもしれませんが、ミラノが経済の中心だからといって、ローマがそれを真似ることはなくて、食も、文化も、人々の心の在り方も、地域らしさを持ち続けています。

  • 日本は自然が豊かで、動植物も多様性に富んでいます。風土による個性は、江戸時代まではもっと濃厚だったはずです。しかし廃藩置県によって中央集権的な政策を推し進めたこと、そして敗戦を経たことで、風土の独自の魅力が影を潜めてしまったのではないでしょうか。地域の文化は残っていても、住んでいる人がその輝きに気づかない。だからこそ、今は"日本のいいところ"を伝えていきたいと思っています。それは日本人に、日本はこんなに多様性がある素晴らしい国だと伝える意味が大きいですね。そう考えて、日本中の酒蔵やレストランや料理人を訪ねています」


  • 生産者に会いに牧場や養鶏場にも積極的に行く。


  • まぐろ養殖場で餌撒きを手伝う様子。




  • 人気の蔵元に話を聞くなど、日本酒を盛り上げる活動も行う。写真は秋田県の新政酒造で新酒の仕込みに参加した際のもの。


  • この想いが形になったプロジェクトのひとつが「The Japan Times Destination Restaurants」だ。


  • Destination Restaurants 2021の1位となった富山の秘境レストラン「L'évo」谷口英司シェフと。


  • 辻調グループ代表の辻芳樹さん、世界一のフーディこと浜田岳文さん、そして本田さんが選考委員を務め、「東京23区と政令指定都市以外」から、珠玉の10店を選ぶというもの。

  • 「日本のレストランは海外でも非常に評価が高い一方、そのほとんどが東京に集中していて、日本の風土や文化を反映した食はまだまだ評価されていない。食とは、その土地で採れる食材や風土、人々が受け継いできた知恵、文化、それらすべてを映し出すものです。欧州では、高い評価を得る店はだいたいが車を何時間も飛ばすような不便な場所にあります。そこでしか手に入らない食材を使い、その環境でしか味わえない体験を提供するからこそ、わざわざそこに行きたくなる。その道のりすら、レストランの魅力なのです。

  • 日本にもそういうレストランは増えてきていて、例えば、宮古島の伊良部島にある『Restaurant État d'esprit(エタデスプリ)』は、シェフの故郷である宮古島の食材と、フレンチの技と、琉球料理の伝統とをブレンドした『琉球ガストロノミー』。ひと皿ひと皿に驚きがあり、まさにここでしか体験できない料理だと感銘を受けました。そういう時間をかけて行く意味のあるレストラン10店を選出しています」


旅で得られたものは必ず自分の糧になる

  • 本田さんが常に旅に出ている理由。そこには、仕事や遊びといった垣根は存在しない。

  • 「旅は僕にとって本を読むのと同じぐらい大事なもの。知らない文化に触れ、知らない人に会い、知らない物を食べて、新しい情報をインプットする。旅がなかったら生きていけないなと思うぐらい、人生において欠かせないものです。旅で得られたインプットを自分の中に蓄積していけば、直接的ではなくても、それは必ず自分の糧になっているはず。旅ほど人生を豊かにしてくれるものはないと思っています」

  • 現在、これまでに訪れた街のことをまとめた「究極の旅行本」を執筆中だという。

  • 「旅先で出会った素晴らしい景色、朝ランに最適な街、おいしいレストラン、感動した世界遺産、様々な視点から街の魅力を紹介する内容で、800ページは超えてしまう予定です。足掛け8年執筆しているので、今年中には出さないとまずい(笑)。なかなか海外には行けない今だからこそ、旅の楽しみ、豊かさが伝えられる、そして自由に旅ができるようになった時の参考にしたくなる本にできればと思い、書き進めています」


NAOYUKI HONDA

  • レバレッジコンサルティング株式会社 代表取締役社長兼CEO。ハワイ、東京に拠点を構え、ヨーロッパを中心にオセアニア・アジア等の国々を旅しながら、仕事と遊びの垣根のないライフスタイルを送る。これまで訪れた国は61ヶ国220都市を超える。近著に『パーソナル・トランスフォーメーション』 (KADOKAWA)がある。



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