COLUMN

2022.03.25

― 世界に誇る、日本の伝統色 ―
「恋する色彩」第八回 

松原 江里佳 written by 松原 江里佳
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  • ―見上げるたびに、願うこと
    遥か彼方の異国で今、同じ空を見上げている人はどれほどいるのでしょうか
    その空は赤く染まった夕空でしょうか、宝石をちりばめた星空でしょうか

    あなたの瞳に映る空の色を、どうか私に教えてほしいと―
  • 写真:川崎市提供

  • ため息が出るほどに果てしなく広がる空を架ける橋「多摩川スカイブリッジ」。
    この橋は、日本へ迎える・世界へはばたく羽田空港エリアと、日本を支える・世界を変えるキングスカイフロントを結びます。
    今回は開通前の特別なシチュエーションで撮影した写真とともに、「多摩川スカイブリッジ」から望む絶景カラーをご紹介します。


    恋する色彩
    今日の私が出会ったのは、「世界に誇る、日本の伝統色」です。


    川崎市の南端にある「キングスカイフロント」は、世界最高水準の研究開発エリアで、世界有数のオープンイノベーション拠点です。多摩川を挟んだ対岸には、多くの国際線ネットワークを持つ羽田空港があるという好立地。しかし、すぐ目の前に見えているものの、このエリアから羽田空港へ行くには、車で迂回して20分ほどかかっていました。少しもどかしい気持ちになりますが、もうその心配はありません。
    今回新たに開通した「多摩川スカイブリッジ」を使えば、車でわずか5分ほどで羽田空港エリアへと到着できるのです!
    しかも、この橋は歩道と自転車道がしっかり整備されているので、ウォーキングにもぴったり。多摩川の絶景を眺めながらゆっくりお散歩も楽しめるのです。

    ではさっそく渡っていきましょう。



  • 多摩川に架かる川崎市内で一番長い道路橋の「多摩川スカイブリッジ」は、その長さ675m。どこまでも続いて行きそうなほどまっすぐに、まるで空へと伸びていくようです。そのダイナミックさは想像以上で、思わずスキップしたくなるほど。この日は少し雲もありましたが、橋からの眺めを遮るものが何もなく、心も身体も開放的になります。

  • それもそのはず、「多摩川スカイブリッジ」には大きな橋の特徴でもあるケーブルや照明灯が全くないのです。鳥の飛翔の邪魔にならないようなるべく橋の厚さを薄くしたり、照明を手すりに埋め込んだりと、多摩川の生態系を守るために様々な工夫がされているそうです。


  • 「水銀色(すいぎんいろ)」の手すりに軽く寄りかかると、ほのかに感じる春の風。「空色鼠(そらいろねず)」をしたゆるやかに広がる空は、曖昧な色調ゆえにゆったりとした気持ちにさせてくれます。
    江戸時代に流行した鼠色の一種で、薄曇りの中にかすかに感じる明るい空色をいう「空色鼠」。目に見える雲の色と、その奥に隠された本当の空の色をさりげなく楽しむ、何とも粋な色です。


  • 空の色をうつしながら流れる「御召御納戸(おめしおなんど)」をした多摩川は、雲のすき間からこぼれる光を反射して、見るたびに表情が変化してゆきます。「御召御納戸」とは深く渋い青で、御召(=縮緬:ちりめん)に「納戸色(なんどいろ)」の染色をかけたものをいいます。

  • 「納戸色」とは江戸時代を代表する藍染の色名のひとつで、すこしくすんだ色調の濃い青のことをさします。名前の由来は諸説あり、「衣服や調度品を納める納戸の入り口にひかれた幕の色」「納戸を管理する役人の着物の色」「反物をしまう納戸の部屋の色」などがあります。明治・大正時代まで流行した納戸色をもとにした色は数多く、「御召御納戸」もそれにあたります。この日の曇り空だからこそ感じることができた、歴史ある色。その瞬間にしか味わえない景色が、ここにはあるのです。


    穏やかな時間に心をゆだねて気ままに足を進めてゆくと、上空を翔けてゆくジェット機の音が心地よく響き渡ります。気付けば羽田空港がすぐ目の前に!




  • あっという間に橋の半分以上を渡っていました。橋の下をゆったりと流れる多摩川と、360°のパノラマビューに夢中で、時の流れに心が追いつきません…!


  • 足元にあった「生色(しょうしき)」のパネルをよく見ると、ここは県境。神奈川県と東京都を片足ずつで行ったり来たりして、ついつい遊んでしまいました。


  • 金は錆びることなく生まれたままの輝きを保つことから、仏教では黄金の別名を「生色」といいます。生まれたばかりのこの橋の美しさを、私の瞳に焼きつけていつまでも輝いてくれたらいいなぁ…なんて思ってみたり。

    撮影しつつゆったりペースで歩いても、渡りきるまで片道およそ20分。くるっとUターンして、今度は大胆にも車道を歩きます。


  • 「忘れ草(わすれぐさ)」色の中央線の上をなぞるように進むと、ときおり吹き抜ける強い風さえ気持ち良く、まるで空を歩いている気分。開通後には決してできない、貴重な体験です。忘れ草とはその色の鮮やかさから、身に着けると憂いを忘れることのできる花とされています。陽気な心で来た道を戻れば、また新しい景色に出会えるはず。




  • 太陽が傾き、空が「薄群青(うすぐんじょう)」へと変わってゆくと、さっきまで雲で見えなかった富士山がうっすら顔を出しました。




  • なんてベストタイミング!日中ももちろん素晴らしいと思いますが、行きと帰りで色が変わる黄昏時もおすすめです。
    40分ほどの空中散歩を終えると、ちょうどお腹も減ってきました。ということで次に向かったのは「多摩川スカイブリッジ」から徒歩およそ5分の「川崎キングスカイフロント東急REIホテル」。ここキングスカイフロントエリアで「多摩川スカイブリッジ」とぜひセットで楽しんでほしいスポットです。




  • ブルックリンの倉庫街をイメージして作られたこちらのホテルは、デザイン性と機能性を兼ね備えた次世代型のライフスタイルホテル。部屋によって異なる5色のカーテンは、多様性を大切にする川崎市のブランドメッセージにしっかりと寄り添っています。

    そしてこちらのホテルには、「多摩川スカイブリッジ」開通を記念した特別メニューがあるそうです。それはぜひともいただきたい!
    一気に空腹スイッチがONになった私が、ホテルのエントランスをくぐると、そこには…


    恋する色彩 このあと私が出会った色は……次回の更新をお楽しみに♪


  • PHOTO:Shinsuke Sugino
    参考文献…『色の名前事典507』(著:福田邦夫、発行:主婦の友社)、『和の色事典』(著:内田広由紀、発行:視覚デザイン研究所)


「恋する色彩」

松原江里佳


  • 松原江里佳(フリーアナウンサー)
    1989年5月5日生まれ。東京都出身。
    札幌テレビ放送でアナウンサーを務め、2015年フリーアナウンサーに。現在は日本テレビ「news every.」リポーター、FMヨコハマ「COLORFUL KAWASAKI」にレギュラー出演の他、日本テレビ「踊る!さんま御殿‼」、「今夜くらべてみました」等のバラエティー番組にも出演。テレビやラジオ、イベントの司会など様々な場で活躍。色彩検定1級、カラーセラピストの資格も持つ。
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