金沢の奥ゆかしさが込められた加賀五彩
- 色は、旅するまちの気候で印象が大きく変わる。それを教えてくれるのが、華やかな柄を落ち着いた色合いで描く加賀友禅だ。
- 加賀友禅に使われる「加賀五彩」は臙脂、藍、黄土、草、古代紫が基本色。
友禅は染めの技法である「友禅染め」を略した言葉。絵模様の輪郭に糊を置くことで色が滲むのを防ぐ。だからこそ思いのまま絵を布に染めることができる。
- 写実的で絵画調の草花模様が多く、刺繍など、染色以外の技法をほぼ用いないのは、加賀藩前田家による武家文化の影響が大きい。
手描きの美しさは加賀友禅の線の繊細さにも現れている。外を濃く、中心を薄く染める「外ぼかし」や「虫喰い」の技法も奥行きのある絵柄の特徴に。 - 金沢市里見町の「茜やアーカイブギャラリー」は、そんな加賀友禅の魅力にたっぷりと触れることができる。店主の北村和子さんは、こんな歴史を教えてくれた。
- 「加賀友禅の大きな特徴は図案の選定から下絵、糊置、彩色と、仕立てる直前の反物になるまで、ひとつの工房が手がけることです。友禅職人が大勢働いていた昔の工房の1階にギャラリーを開いたのは、その伝統をお伝えしたかったからなんです」
- 長町武家屋敷跡も近い里見町には、多くの染色工房があった。近くを流れる鞍月用水では、染色で使われた糊を洗い落とすため、色とりどりの反物が広がる光景が見られたという。
加賀五彩を基本に多彩な色が生み出される。 友禅染の染色は作家の色彩感覚が仕上がりを決める。色見本はその感覚の拠りどころに。
- 2階の工房では加賀友禅作家の奥田雅子さんが振り袖を彩色していた。
- 「染料の配合や天気、気温、湿度で染める色に微妙な違いが出てきます。それらを調整しながら、人の手で均一に塗る職人の技が生きているからこそ、加賀友禅のまろやかな風合いが生まれます」と、奥田さん。
「依頼主と相談しながら、図柄や色を決める温かみのある関係も加賀友禅ならでは」と話す奥田雅子さん。 ギャラリーでは制作工程を学びながら、小風呂敷の手描き加賀友禅体験やバッグなどの型染め体験が楽しめる。
茜やアーカイブギャラリー
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住所:石川県金沢市里見町53-1
TEL:076-223-8555
営業時間:10:00~17:00
営業日:土曜日・日曜日・祝日
体験料:こぶろしき手描き加賀友禅体験 ¥3,500、トートバッグ型染め体験 ¥1,800~ 他
アクセス:JR「金沢駅」から路線バスにて「広坂・21世紀美術館」下車、徒歩約10分
akaneya-web.com/archive/
- 心躍る加賀友禅の美しさを目に焼き付けながら、次に向かったのは、ひがし茶屋街の「志摩」。文政三年(1820年)に建てられた格式高いお茶屋には、「寒村庵」と呼ばれる別棟のお茶室がある。
「寒村庵」の庭を眺めながら、いただく抹茶と和菓子。練り切りは季節により変わる。 - 風雅な木塀と苔庭を前に味わう抹茶と和菓子。爽やかな風が吹き抜け、季節で変化する金沢の色を歴史とともに感じる瞬間だ。
志摩/寒村庵
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住所:石川県金沢市東山1-13-21
TEL:076-252-5675
営業時間:9:30~17:30/(12月~2月)9:30~17:00
休業日:無休
入館料:〈志摩〉一般¥500/小・中学生¥300
アクセス:JR「金沢駅」から路線バスにて約10分、「橋場町」下車、徒歩約5分
ochaya-shima.com
- 「加賀五彩」は、せり出した出格子の建物が並ぶ、ひがし茶屋街も彩る。艶やかな朱色の紅殻(べんがら)で塗られた茶屋の外観と、緑のしなやかな葉がゆらぐ見返り柳のコントラストは、加賀友禅の奥ゆかしさと重なるよう。
- 色を愛でる富山、金沢の旅。去るのが名残惜しい豊かな食、工芸、風景は今もその地を美しく彩っている。
金沢を訪れる多くの人が立ち寄るひがし茶屋街も色彩に目を向けると新たな発見が。そぞろ歩きの楽しみがより深くなってくる。
金沢東急ホテル
- 金沢東急ホテルのロビーフロアにあるクラブラウンジにも、金沢の文化を感じられる工芸作家の作品が展示されている。ティータイム・カクテルタイムに、ゆったりした時間を過ごせる。
- ラグジュアリーフロアの客室には、友禅の「加賀五彩」とは異なる「九谷五彩」の彩法を用いた九谷焼のマグカップも。
金沢東急ホテル
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住所:石川県金沢市香林坊2-1-1
TEL:076-231-2411
アクセス:JR「金沢駅」から路線バスにて約10分、「香林坊アトリオ前」下車、徒歩約2分、JR「金沢駅」からタクシーで約6分、北陸自動車道〈金沢東IC〉から約10分
tokyuhotels.co.jp/kanazawa-h/