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2021.08.13
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―「私だけの加賀五彩」を探して―
「恋する色彩」第七回 

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  • Erika Matsubara
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  • ―故きを温ねて新しきを知る―

    ゆっくりと瞳を閉じて、この街のことを想うと
    何色の雫が記憶を伝い、私の心を染めるでしょう。

    私にしか映らない 色の趣
    私にしか聞こえない 色のささやき
    私にしか届かない 色の香り
    同じ景色を眺めていても、それぞれの瞳にそれぞれの色が刻まれてゆくように
    私だけの、あなただけの、瞬間だけの色が
    この街で瑞々しく咲いてゆく

    北陸・金沢。
    歴史ある豊かな色彩が、その優美な街並みを作り出す
    色が紡いだ伝統の美をもつこの街で、一泊二日の金沢色めぐり。

    恋する色彩
    今日の私が出会ったのは、「私だけの加賀五彩」です。


  • 日本を代表する三大友禅のひとつ、加賀友禅から生まれた「加賀五彩」。
    美しい自然の息吹を感じる加賀友禅は、藍・臙脂・黄土・草・古代紫の五彩を基調としています。加賀の曇り空の下で見る自然の色彩、落ち着いた中間色が特徴で、この色調は武家にも好まれ「曇天の美」とされていたそうです。
    始まりは500年ほど前にさかのぼり、独特の染め技法と文化が培ってきた加賀友禅。写生を重んじ、ありのままの瞬間を切り取っては、その美しさを着物に封じ込めました。そうして当時の人々の瞳に映った色彩もまた、「加賀五彩」として脈々と受け継がれているのです。まさに過去からの手紙ともいえる「加賀五彩」に心を重ねて、現代を生きる私がここ金沢で受け取った「私だけの加賀五彩」を探す旅に出かけましょう。

  • 「金沢 東急ホテル」から始まる金沢の旅で最初にご紹介するのは、「加賀友禅会館」です。
    こちらは特別展示室やグッズコーナー、染め体験コーナーもあり、加賀友禅を身近に感じることができる施設になっています。

  • 「私だけの加賀五彩」を見つけるにあたって、まずはオリジナルを知ろう!ということで、さっそく加賀友禅染めの手描き体験をしてみることに。こちらではあらかじめデザインが糊置きされた生地に、筆で彩色をしていきます。椿や菊、薔薇など様々な模様が選べますが、花びらの枚数が多くて細かい作業ができそうな牡丹に決めました。

  • 中心を濃く外を淡く染める「内ぼかし」の技法を使う京友禅とは対照に、加賀友禅は外を濃く中心を淡く染める「外ぼかし」の技法を使います。ぼかし染めがしやすいように、本来の加賀五彩より少し明るめのトーンを準備していただいているので、初心者でも簡単に濃淡の対比を実感することができます。薄い色と濃い色がそれぞれ五色、合わせて十色の染料で色付けしていきます。また加賀友禅で欠かせないのが「虫喰い」という技法。写実的な表現を大切にしていたため、美しい草花に潜む虫喰いまでもリアルに描き、高価な着物にも虫喰いの技法が使われていることが多いのだとか。


  • 今回は欲張って、「外ぼかし」と「虫喰い」の両方にチャレンジしてみました。
    虫喰いは境目をはっきりと描きますが、外ぼかしは外側を濃い色で塗ったらすぐに薄い色をかさねて境目をぼかしてゆきます。乾く前にぼかしを入れないといけないので、花びら一枚一枚に対して毎回ぼかしの作業をするため、同じ色であっても一度にすべてを塗ることができません。この工程に慣れるまでは意外と大変で、自分が今持っている筆が濃い色か薄い色か混乱してしまうことも。そしてやはり自然なぼかしにすることは難しく、思いがけない方向に滲んでしまったり、色の組み合わせがイメージと違ったりと…最初は思うようにできませんでした。幸い花びらの枚数が多かったので、作業が進むにつれて色の出し方や滲み方にも慣れてきて、後半はサクサクと進めることができました。
    すべて塗り終えたら一度ドライヤーで乾かした後、水の中につけて糊をとっていきます。糊置きされた部分がはがれてゆくとデザインの輪郭が白抜きされるので、ぼかしがより際立ちます。糊をきれいに洗い流したら、しっかりと乾かして完成です。一時間ほどの作業で、世界にたった一つのハンカチが出来上がりました。

  • 色の組み合わせも自由に選べるので、気軽に本格的な作家体験が楽しめます。
    自分なりのポイントは、十色すべてを使ったことです。実際の植物は、同じ一つの花でも花びら一枚一枚の美しさや色付きはそれぞれ。葉も同じで、若いものもあれば、枯れかけや傷んでいるものもあります。あえてその違いを強調して、一枚ずつを「個」として捉えながら賑やかな色合いにしてみました。
    人生初の加賀友禅染めの手描き体験、私の腕前はいかがでしょうか?

  • さて、実際の「加賀五彩」を体験したら、次はいよいよ「私だけの加賀五彩」探しを始めましょう。
    伝統的な工芸品・加賀友禅が有名なだけあって、街のいたるところで着物姿の方とすれ違います。おそらくそのほとんどが観光客の方ですが、風情ある金沢の街並みは着物がとてもよく似合います。ということで、私も着物姿で色探しに出かけてみることに。


  • 訪れたのは、金沢の着物レンタルショップ「金沢きもの花恋」。
    こちらにはおよそ1500着もの着物や浴衣が壁一面にずらりと並べられ、まるでミュージアムのよう。レトロスタイルからモダンスタイルまで幅広い種類や色、デザインがあるので、自分にぴったりの一着に出会えます。着物はもちろん、帯や飾り、ヘアスタイルまですべてお店の方と相談しながら決められるので、知識がなくても安心です。

    見ているだけでわくわくするような豊かな色彩に、テンションは上がりっぱなし。手に取る着物すべてが素敵に思えて、なかなか決められません。普段あまり着たことがない色にしようと青系に手を伸ばしつつも、マイブームである黄色系も捨てがたい。いやここはあえて金沢らしく中間色でいこうか…と、優柔不断な私がおよそ40分かけて選んだ着物がこちら。
  • 「ベラスケス・レッド(Velázquez red)」のダリアの花が印象的な夏着物です。
    「私だけの加賀五彩」一色目は、バロックを代表するスペインの画家ディエゴ・ベラスケスに由来する「ベラスケス・レッド」で、輝かしい赤色です。若くして宮廷画家となったベラスケスは、光の明暗と色彩の濃淡を巧みに利用して、二次元の世界に三次元のような奥行きのある空間をうみだしました。袖を通した途端、平面の模様が立体的に華やぐ着物と、彼の画風の魅力はどこか似ているように感じます。

    着付けとヘアセットをしてもらい、続いて向かうのは「金沢きもの花恋」からほど近い、言わずと知れた名勝「兼六園」。この日は金沢らしい曇り空でしたが、新緑の鮮麗さが鏡のように霞ヶ池に映し出されて、生命力あふれる若葉が夏を謳っているようでした。

  • 「私だけの加賀五彩」二色目は、霞ヶ池を彩る深い緑の「常盤色(ときわいろ)」です。松や杉のような常緑樹の葉のように「変わることのない緑」の美名で、永遠不滅・不老長寿の象徴としての神聖な色である「常盤色」。長い歴史を生き抜き、様々な景色を眺めてきた神秘的な生命力に対する畏敬の念を感じる色でもあります。

  • 兼六園のシンボルでもある徽軫(ことじ)灯籠と、手前に虹橋が架かる霞ヶ池の中心には蓬莱島(ほうらいじま)という島があり、こちらも不老長寿を表しています。
    まさに「常盤色」という表現がぴったりな兼六園の景観は、鮮やかな赤が入った着物と傘がよく映えます。
    髪には加賀の伝統的な工芸品である水引の飾りをつけていただきましたが、この水引には相手を思いやる心や「結び」の縁も込められているそうです。我が国独自の文化を全身に纏いながら散策すると、景色と心がさらに寄り添う気がしました。

  • ではこのまま少し歩いて、金沢を代表する茶屋街のひとつ「ひがし茶屋街」へ。黒瓦と格子の町家が続く古い街並みは、国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されています。昔の佇まいをそのままに、伝統工芸品を扱う雑貨店やお洒落な喫茶店などが立ち並ぶ人気の観光スポットです。ですが、今でも一見さんお断りのお茶屋が数多く残っているそう。

  • そんな情緒あふれるひがし茶屋街で訪れたのは、「国指定重要文化財 志摩」です。文政三年(一八二〇年)に建てられた格式高いお茶屋の建物で、典型的なお茶屋の作りをそのまま残しています。

  • 二階の客間は遊芸を主体とした繊細で優美な造りで、間仕切りのない開放的な空間になっています。
    贅沢で粋な遊び心を感じる艶やかな世界で、客と芸妓が非日常を味わう、それが「お茶屋遊び」。
    遊びといっても、琴や三味線、舞や俳諧など、客・芸妓ともに高い教養と技術が求められるものばかりです。
    お茶屋には主に上流町人や文人たちが集い、娯楽と社交の場として華やかなひとときを共有していました。

  • こちらでは三味線とお座敷太鼓を実際に叩かせていただきました。お座敷太鼓は三味線のお囃子に合わせて平太鼓と締め太鼓を用いてドンドン・ツクツク・ドンなどと叩きます。金沢特有のもので、別名「散財太鼓」。この呼び名からも、旦那衆の楽しむ様子が目に浮かびます。

  • 心地のよい低音が部屋の隅々まで響くと、先ほどまでの静けさが嘘のよう。お座敷に染み付いた人々の喜気と当時の賑わいが、次々と浮かび上がってきます。私たちのほかには誰もいないはずなのに、笑い声や手拍子までも聞こえてきそうなほど。志摩が見てきた数々の人生の気配が、壁や楽器、置物や掛け軸などからじんわりと伝わってくるのでしょう。三味線はもとより太鼓のリズムすら習得できずに終わりましたが、志摩の声を聴くことができて大満足でした。

  • また志摩では、別棟の「寒村庵」で金沢の伝統ある和菓子と共に、お庭を眺めながら抹茶をいただくことができます。
    気付けば降り出した細雨。はらはらと葉を濡らす音に耳を傾け、庭からたつ草木の香りを胸いっぱいに吸い込むと、なんとも穏やかな時間が流れます。

  • この日の生菓子はきんとん製の「紫陽花」。雨が滴るつややかな紫陽花をモチーフにして、「秘色(ひそく)」の餡に紫みの白である「霞色(かすみいろ)」を混ぜ込み、きらめく雫を澄んだ寒天で表現しています。中の餡は口あたりなめらかなで、かすかな粒の食感と甘さが上品。抹茶の奥行きある苦みと、あとからふんわり広がる爽やかさが際立つ生菓子です。隣には志摩の庭で採れたやぶもみじが添えてあり、季節のうつろいに応じたおもてなしの心を感じます。

    「私だけの加賀五彩」三色目は、潤沢を帯びた紫陽花の美しさを伝える「秘色」です。「秘色」とは、青磁の肌の色のような淡い青緑のことで、神秘的な美しさを持つ色です。中国、越州窯で後漢以後に作られた青磁は、その美しさから天子に献上され、中でも最高級品の色をした青磁は一般の目に触れることなく「秘色」と呼ばれていました。
    雨上がりの晴れた空の澄んだ青さ「雨過天晴(うかてんせい)」が青磁の理想的な色とされていますが、この言葉は芳しくない状況が良い方へ向かうことのたとえでもあります。

    お茶の時間を満喫し寒村庵を後にする頃、ちょうど雨が通り過ぎ、街はまぶしい日差しできらめいていました。まるで雨露をまとって、その美しさがより一層際立つ紫陽花のように。金沢の雨は、情趣に富んだ街をさらに美しく演出する大切なエッセンスだったのだと気づかされ、まさに雨過天晴!一つの生菓子から、金沢の魅力を再発見することができました。

  • 金沢で「私だけの加賀五彩」を探す旅も、ちょっとここで一休み。洋服に着替えたら、出発地である「金沢 東急ホテル」へ。こちらのホテルではクラブラウンジ特典付きのプランを利用すると、チェックアウトまで何度でもクラブラウンジを使うことができます。

  • 金沢の工芸作家の作品はもちろん、全国の逸品で揃えられた備品はどれもこだわりのもの。北欧のぬくもりを感じる家具も、くつろぎの時間にぴったりです。


  • そしてなんといっても、クラブラウンジスタッフの方が厳選した金沢のお菓子やソフトドリンク、ビールにワインも好きなだけ楽しめるのが嬉しいです!この時間は抹茶ショコラやクッキー、金沢のおかきをいただきました。お気に入りは、金沢のじろ飴を使ったキャラメルとたっぷりのクルミをタルト生地で包んだお菓子、エンガディナー。こっくりとしたキャラメルの甘みとバターの風味が豊かで、やわらかな渋みが香ばしい加賀玄米茶と相性抜群でした。あたたかな気遣いが感じられるこの空間に身を置くだけで、おのずと癒されてゆく心と身体。ちょっとのつもりが、気づけばたっぷりの休息に。そろそろ四色目を探しに出かけましょう。余談ですが、朝食の後にもこちらのラウンジでまったり過ごしたので、かなり満喫させていただきました(笑)。

    「私だけの加賀五彩」探しの旅、続いて訪れたのは「鮨処 こいづみ」。
    高級感のある和モダンな店内は、いたるところに金沢らしい金があしらわれています。
    こちらでは、こだわりの北陸・金沢のネタを中心とした、大将の小泉英樹さんが握る本格江戸前鮨を味わうことができます。


  • カウンター席に案内していただいたので、目の前で次々とネタが踊ってゆく様子にワクワクが止まりませんでした。期待度はMAX!食い入るように大将の動きを見つめながら、最初に登場したのは―――板!?

  • ではなく、凍らせたヒマラヤの岩塩。
    この岩塩にすだちをしぼり、お刺身を軽く滑らせていただくという初めてのスタイルでした。この日のお刺身は昆布〆のコチ、バイガイ、小ダコで、すべて金沢のもの。
    雑味のない岩塩の強い塩気がお刺身の旨味を引きだし、素材本来の味をしっかりと教えてくれます。おまかせコースでは他にも、厳選された食材を使用したミニ丼や、独創的なおつまみなども握りの前にいただけます。こうして始まった幸せタイム。大将の握る姿を写真に収めようと必死でシャッターを切るも、握るスピードが速すぎてブレるわブレる。さすが、この道四十五年以上のベテランです。ということで、一瞬の隙を見つけて撮影した、ネタを卸す写真を載せさせていただきます。

  • 能登のアジや富山のマグロに、金沢の甘えびや煮ハマグリなど、ぞくぞくと登場する握りに毎回感激しては大将を見つめる。を繰り返し、ついに四色目とご対面です。
    キツめに〆たコハダと並んでいるのは、金沢でとれたのどぐろ。昆布〆の後に軽く炙ってあるので、ほのかな香ばしさと甘みがふわっと咲いてゆきます。それでいてクセがなく後味はあっさり。旨味の余韻に舌も喜びます。

    「私だけの加賀五彩」四色目は、金沢食材の代名詞ともいえる「薄桜(うすざくら)」をした、のどぐろの身色です。
    紅染めのもっとも淡い色は平安時代に愛された「桜色(さくらいろ)」ですが、それよりもさらに薄いとされているのが「薄桜」です。別名は「薄花桜(うすはなざくら)」で、紅みの白をいいます。桜の花と日本人の心は古くから深いかかわりがあり、物語や書物にも幾度となく登場しています。まだ綺麗なうちにはらはらと舞ってゆく姿に己の恋心を重ねたり、つかもうとするたび指の間をすり抜ける花びらに、想い人の心変わりを嘆いたのでしょうか。そして約束もなしに、また春の訪れとともに桜の花は咲き乱れるのです。心の機微や人生の移り変わりをここまで表現できる花は、そう多くはないはず。
    今も昔も非常に愛されている桜。淡い紅色のものは桜の文字がつくものも多く、他にも、紅みの明るい灰をさす「灰桜(はいざくら)」や江戸時代の流行色「桜鼠(さくらねず)」といった色名もあります。近い色味を「桜」を用いてさらに区別したところに、日本人特有の桜への感性が垣間見えます。

    桜を愛でるように刹那を慈しむ心が育んだ、日本人の思いやりと細やかな気遣い。
    「鮨処 こいづみ」でいただいた握りも細部にまで気を配り、食材の最高の瞬間を提供することが何よりのおもてなしという大将の思いが伝わってきす。「ごちそうさまでした」この言葉の意味を今一度考えたくなる、そんな四色目との出会いでした。

    さて、「私だけの加賀五彩」を探す旅もいよいよ最後の一色になりました。 前回の「恋する色彩 第六回(※)」でもお伝えしましたが、ここ金沢に縁結びスポットがあるそうなので、そちらで色探しをしてみましょう。
    ―金沢で味わう「夏の色彩」- 恋する色彩 第六回

  • 場所は兼六園の入り口近く、金沢21世紀美術館の向かいにある、金沢最古の宮「石浦神社」。
    こちらには良縁祈願の若者が多く訪れるそうで、この日も着物姿の女性やカップルが参拝していました。
    運が良ければ、石浦神社公認キャラクターのきまちゃんに会えることもあるのだとか。

  • 巫女さんや神職の方にお話を伺ったところ、石浦神社には他ではなかなか出会えない御守があり、それが大人気だそう。ということでさっそく案内していただくことに。
    するとそこには、私も初めて見る光景がありました…!!!

  • ずらぁりと並んだ、カラフルな御守たち。水玉模様の水玉守だけで、なんと驚きの四十色。見た瞬間「わぁお、圧巻の品揃え!」と思わず本音がポロり。これほどの種類なら、こだわりが強い人でも自分のお気に入りカラーが見つかりそう。
    水玉守の水玉(=まる)は、まるが神様の形とされていて「物事がまるくおさまります」という全体向上の意味が込められています。その他にも、健康守や安産守、ペット守に旅行安全守など幅広い種類の御守がぎっしり。これは選ぶのが楽しい!人気の理由もわかります。御守選びでこんなにわくわくしたのは生まれて初めての体験でした。
    最初は四、五色ほどだったそうですが、多くの方の手に取ってもらいたいという思いから、徐々にカラーバリエーションが増え、現在の数になったようです。一番人気はピンク系だそうですが、私が選んだのは「エジプシャン・ゴールド(Egyptian gold)」の水玉守です。

  • 「私だけの加賀五彩」五色目は、輝く水玉模様の「エジプシャン・ゴールド」です。死と再生という考えが浸透していた古代エジプト人にとって、黄金は再生に欠かせない太陽や決して腐敗しない不滅の神々の肉体・肌の色とされていました。王家の谷のツタンカーメンのマスクも大量の金が使われており、その煌びやかな光は今も失われていません。そしてそんな不死の象徴とされる黄金を連想させたのが、「エジプシャン・ゴールド」などの黄色だったのです。その他にも、タイでは王、インドでは幸せな結婚生活やベトナムでは豊かな実りなど、黄色が象徴する意味合いは数多くあります。色彩心理の観点でも希望や未来・元気をイメージキーワードとして持つ色なので、心を活性化してくれる効果もあります。

  • 水玉パワーと黄色のエネルギーで、心まぁるく、豊かに過ごせたらいいな、と思いこの色にしました。
    しかも平日は上袋も十色から選ぶことができ、袋の中には災い除けの水晶が入っているので嬉しさ倍増です。

  • ほくほく気分で石浦神社を後にしようとしたとき、思い出したのが肝心の「良縁祈願」。色鮮やかな水玉守に興奮しすぎて、危うく忘れて帰るところでした。こちらには縁結びの絵馬もあるので、ハートの部分に渾身の願いを書き綴り、しっかりと結んでおきました。内容は、とてもいえませんが…。
  • 目に染みるような青葉がそよぐ石浦神社を出て、大きく深呼吸。突然吹き抜けた薫風に空の広さを教えられたとき、照り付けていた太陽もゆっくりと仕事を終えてゆきます。ふと気付けばあっという間の一泊二日、金沢色めぐり。「私だけの加賀五彩」を探す旅もそろそろおしまいです。
    旅の終わりはいつだって寂しいけれど、いつかまたくる旅の始まりと信じているから、足取りは不思議と軽い。

    色と色、縁と縁、想いと想いを結んでゆく水引のように、すべての出会いに感謝して夏風にのせてどこまでもこの日の色を届けに行ける。

    鮮やかによみがえる金沢の色たちを胸に、まだこみ上げる好奇心を懐かしさに変えながら、明日を過ごす東京へ。

    その街角を曲がれば きっとまたたくさんの新しい出会いが待っているから。

    恋する色彩。きっと私は、明日も恋をするでしょう。

ご紹介した場所

  • この度は取材にご協力頂き有難うございました。心から感謝申し上げます。

    加賀友禅会館様、金沢きもの花恋様、兼六園様、ひがし茶屋街様、金沢フィルムコミッション様、国指定重要文化財 志摩様、鮨処 こいづみ様、石浦神社様

    ※掲載順

  • 参考文献…『色の知識-名画の色・歴史の色・国の色-』(著:城一夫、発行:青幻舎)、『和の色事典』(著:内田広由紀、発行:視覚デザイン研究所)、『色の名前事典507』(著:福田邦夫、発行:主婦の友社)、『色 世界の染料・顔料・画材-民族と色の文化史-』(編:アンヌ・ヴァリション、発行:マール社)

「恋する色彩」

松原江里佳


  • 松原江里佳(フリーアナウンサー)
    1989年5月5日生まれ。東京都出身。
    札幌テレビ放送でアナウンサーを務め、2015年フリーアナウンサーに。現在は日本テレビ「news every.」リポーター、FMヨコハマ「COLORFUL KAWASAKI」にレギュラー出演の他、日本テレビ「踊る!さんま御殿‼」、「今夜くらべてみました」等のバラエティー番組にも出演。テレビやラジオ、イベントの司会など様々な場で活躍。色彩検定1級、カラーセラピストの資格も持つ。
    ■Official HP
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