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2021.11.05
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トレたび×COMFORTS
観光列車「あめつち」を愉しみ、日本のルーツに出会う山陰の旅

今回は岡山を出発し、山陰方面へ。鳥取・島根を行く観光列車「あめつち」に乗り、ブルーの車体のモチーフにもなっている「たたら製鉄」にちなんで、日本遺産「出雲國たたら風土記」のストーリーにふれる旅に出かけよう。歴史と伝統を体感する出雲路は、思いがけない日本を再発見させてくれるかも。
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  • 小越建典
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神々の国で「ネイティブ・ジャパニーズ」を感じる列車旅



  • 「あめつち」は、古事記の書き出し「天地(あめつち)の初発(はじめ)の時」に由来する。多くの神話の舞台となった山陰地方らしく、どこか神秘的なネーミング。同時に、風光明媚な車窓や豊かな食といった観光列車の旅の王道的な楽しみも連想させる。「ネイティブ・ジャパニーズ」をコンセプトに、山陰の文化と自然を表現する。


  • 列車は、鳥取駅から出雲市駅までの約150kmを約3時間半かけて走る。ときに荒々しい日本海の海岸線に沿って、大山、斐伊川、宍道湖など眺めつつ、ところどころ徐行しながら進む。


  • 車内は「白木の質感を表現した」という木目調が多用され、因州和紙、石州瓦、神楽衣裳といった山陰の工芸品が、そこかしこに配される。インテリアと外界に広がる雄大な自然を合わせ、文字通りの「車窓」を楽しめるのが、「あめつち」の醍醐味だろう。


  • オプションの食事は、ぜひ事前予約をおすすめしたい。山陰の幸をぎゅっと詰め込んだ弁当は、彩りが素晴らしい。下りは鳥取牛やアゴ、ずわい蟹、上りは島根牛に大山鶏、旬の地魚と、豊富な食材をいただける。

  • これはもう、呑まずにいられない。下りで販売される「山陰の酒と肴」は、2100円で出雲の銘酒「豊の秋 純米吟醸 花かんざし」がセットになっているというお得な弁当。4種類の地酒飲み比べセット「山陰銘酒めぐり・因幡編/出雲編(1850円)」、松江の地ビール「ビアへるんしまねっこエール(550円)」など、車内販売のアルコールもチェックしよう。

  • 沿線には鳥取砂丘や出雲大社、白壁土蔵が有名な倉吉、松江城に玉造温泉など、観光名所も多い。日本のルーツを体感する山陰の旅を、「あめつち」でグレードアップしてはいかがだろうか?



現代に蘇る古の鉄文化


  • 奥出雲町は世界で唯一、古代の製鉄法「たたら製鉄」を継続している町。奥出雲たたらと刀剣館は、日本遺産「出雲國たたら風土記~鉄づくり千年が生んだ物語」のガイドセンターであり、最盛期だった江戸時代の企業たたらと、現在の日刀保たたらの様子を映像と実物大断面模型で紹介している。
    ふいごを操作する作業員を番子という。展示のふいごを操作して「番子体験」をしてみよう。毎月第2日曜・第4土曜(10:00~、13:00~)は、刀匠による日本刀鍛錬の実演も。




奥出雲たたらと刀剣館


  • 住所:島根県仁多郡奥出雲町横田1380-1
    TEL:0854-54-2260(奥出雲観光協会)
    営業時間:9:30〜16:30
    定休日:月曜日(祝祭日の場合は翌日)
    アクセス:JR出雲横田駅から車で5分/駐車場あり
    料金:入館料¥530(刀剣鍛錬実施日¥1,270)
    okuizumo.org/jp/guide/detail/208
    ※Webサイトで最新情報をご確認の上、お出かけください。



製鉄で栄えた名家の邸宅へ



  • 絲原家は江戸時代に松江藩の製鉄師として、たたら製鉄に携わった名門。農民でありながら、五人扶持士分格という特殊な階級で活躍した。当館には、たたら製鉄にまつわる資料のほか、儀礼用具・嫁入り道具などの家具調度・什器や衣類といった絲原家ゆかりの品々、さらに藩主からの拝領品、藤原定家筆「明月記断簡」(県指定文化財)、千利休筆の書状といった美術工芸品が展示されている。重要文化財の住宅内につくられたカフェ「茶房十五代」で、かつての繁栄に思いを馳せてみては。




絲原記念館


  • 住所:島根県仁多郡奥出雲町大谷856
    TEL:0854-52-0151
    営業時間:9:00〜17:00
    定休日:展示替え日(3、6、9月に各5日間)、年末年始(12/30~1/5)
    アクセス:JR木次線出雲三成駅より約4km/駐車場あり
    料金:¥1,000(冬季料金¥800)
    itoharas.com
    ※Webサイトで最新情報をご確認の上、お出かけください。



来待石の歴史と伝統を体感する



  • 来待石は約1400万年前の地層から産出する凝灰質砂岩。江戸時代には松江藩が許可なく藩外へ販売することを禁止していた特産品で、現在は「島根県の石」(日本地質学会)に選定されている。
    採石場跡はジオパークのジオサイト(見どころ)に指定されており、ダイナミックな岩肌を間近で見学できる。
    ミュージアムでは、来待石にまつわる歴史や文化を展示。かつての採石の様子や、来待石でつくられる伝統的工芸品「出雲石灯ろう」の製作工程をオブジェで再現している。工房では来待石を使った「ペンダント作り体験」や「時計作り体験」も。




来待ストーンミュージアム


  • 住所:島根県松江市宍道町東来待1574-1
    TEL:0852-66-9050
    営業時間:9:00~17:00
    定休日:火曜日(祝日の場合は翌平日)・年末年始
    アクセス:JR来待駅より徒歩15分/駐車場あり
    料金:¥390
    kimachistone.com
    ※Webサイトで最新情報をご確認の上、お出かけください。



食文化に合わせた伝統の酒



  • 明治29年(1896)に創業した老舗の酒造会社。厳選された酒米と松江郊外から採れる湧水を原料に醸造された「豊の秋」は、長く日本航空国際線のファーストクラスで採用されたように、松江を代表する銘酒だ。やや辛口の味わいは、山陰の豊かな食材を意識し、料理に合うようこだわり抜かれたもの。松江を訪れたら、杉玉がかかる風情豊かな酒蔵を見学して、自慢の日本酒を飲み比べしてみよう。きっと、お気に入りの一本が見つかるはずだ。



米田酒造


  • 住所:島根県松江市東本町3-59
    TEL:0852-22-3232
    営業時間:9:00〜17:30
    定休日:不定休
    アクセス:JR松江駅から徒歩15分/駐車場あり
    料金:見学無料(要予約)
    toyonoaki.com
    ※Webサイトで最新情報をご確認の上、お出かけください。



どじょうすくいの故郷へようこそ



  • 「出雲名物 荷物にならぬ 聞いてお帰り 安来節♪」。安来は北前船の寄港地で、古くから各地の民謡の交流がさかんだった。それらの民謡を 「おさん」という芸妓が、アレンジで歌った「さんこ節」が安来節の原型。以来、日本中で愛される民謡となった。安来節演芸館では、ハリのある節回しと、コミカルなどじょうすくい踊りを披露。桟敷風の客席で迫力のライブを楽しめる。併設する食事処では、どじょうのからあげが串に刺さった「まるごと安来丼」が人気。





安来節演芸館


  • 住所:島根県安来市古川町534
    TEL:0854-28-9500
    営業時間:10:00〜17:00
    定休日:水曜休(5月、10月、11月は第一水曜日のみ休館)
    アクセス:JR安来駅からバスで20分/駐車場あり
    料金:¥800
    y-engeikan.com
    ※Webサイトで最新情報をご確認の上、お出かけください。



松江と山陰観光の拠点として最適なシティホテル


  • 宍道湖、中海という2つの汽水湖に挟まれた松江は、国宝松江城の店主や掘割など、古き良き風情を残す水の都。JR松江駅徒歩3分の松江エクセルホテル東急は、松江と山陰観光の拠点として最適なシティホテルだ。レストラン「MOSORO(モソロ)」では、島根各地の食材をライブキッチンで調理し、和洋折衷のバラエティ豊かな料理を提供する。午後には20種類のデザートが食べ放題のケーキバイキングも開催される。温泉好きの方は、徒歩圏内の「松江しんじ湖温泉」で、足湯や日帰り温泉に浸かるのもよいだろう。


松江エクセルホテル東急


  • 住所:島根県松江市朝日町590
    TEL:0852-27-0109
    営業時間:10:00〜17:00
    アクセス:JR松江駅から徒歩3分/駐車場あり
    料金:1泊2食付¥12,300
    tokyuhotels.co.jp/matsue-e
    ※Webサイトで最新情報をご確認の上、お出かけください。



私たちの心のルーツをめぐる旅へ


  • たたら製鉄にたずさわる出雲の人々は、原料となる砂鉄を採取した土地を広大な稲田に再生し、同じく原料の木炭をうみだす山林を循環利用してきたという。自然との共生、サステナブルな資源の活用といった、今私たちに求められているテーマは、彼らにとって当たり前の生き方だったのかもしれない。現代を生きる私たちと、かつての日本人の暮らしに思いを馳せながら、観光列車「あめつち」と日本遺産「出雲國たたら風土記」の旅を楽しもう。

  • 【写真提供先一覧】
    奥出雲町 商工観光課、米田酒造、絲原記念館、モニュメント・ミュージアム 来待ストーン、安来節演芸館、(車両写真)交通新聞クリエイト



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