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2023.06.16
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まち歩きのプロがナビゲート!
中之島にみる 水の都<後編>

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  • Shinichi Takaoka
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  • 日本銀行から西は、風景が高層オフィスビル群へと一変します。大阪駅前と御堂筋沿道とを合わせ、中之島は都心の高層ビル地帯として発展することが期待されてきた場所でもあります。高度経済成長期には、四つ橋筋を挟んで並ぶ朝日新聞社グループのビルを中心に、特別に高さ制限の緩和を受けた、この時代を代表する高層ビルが建設されました。それから半世紀を経た21世紀はじめから、それらのビルも順番に更新が進み、今では100mを超える超高層ビル群が中之島の幅いっぱいに建ち並ぶ、大阪随一のスカイスクレーパーを形成しています。ひとつひとつのデザインにも注目してもらいたいですが、川面を照らすビル群の夜景も格別の美しさです。
  • 1925年(大正14年)に建築家・渡辺節が設計、そして村野藤吾が製図主任を担当して完成した名建築、大阪ビルヂングを復元的に超高層化したダイビル本館(2013年)から先の一帯は、文化・芸術ゾーン。2022年(令和4年)にオープンした、空中に浮かせたようなブラックキューブがアイコンとなっている大阪中之島美術館のまわりには、こちらは対照的に建物のほとんどを地下に埋めた国立国際美術館(2004年)と、プラネタリウムのある大阪市立科学館(1989年)が並んでいます。実はこのエリアは歴史的にもアートと縁のある場所で、近年世界的にも注目を集める戦後の前衛美術集団「具体」のリーダー、吉原治良が1962年(昭和37年)に古い蔵を改修して開設した展示施設、「グタイピナコテカ」があったところでもあります。昨年、大阪中之島美術館と国立国際美術館が共同で大規模な「具体」展を開催したことは、歴史と場所の必然だったわけです。四つ橋筋まで少し戻れば、中之島フェスティバルタワー・ウエスト(2017年)には、朝日新聞を創刊した村山龍平の貴重なコレクションを展示する、中之島香雪美術館もあります。
  • なにわ筋周辺まで来ると中之島の土地は大きく膨らみます。ここは2031年開業を目標に建設が進む地下鉄道、大阪駅と難波駅を結んで関空へと至る、なにわ筋線の中之島駅が設けられることから、この数年で一気に開発が進むことが予想されるエリアです。昭和の香りが色濃く残る大阪のグランドホテル、リーガロイヤルホテル(1965年)、また建築家・黒川紀章晩年の大作のひとつ、大阪府立国際会議場(2000年)へのアクセスも改善されることで、国際色豊かな中之島西部の中核となることが期待されています。また、大阪市では水辺の賑わいづくりの一環として、河川空間への商業施設の設置を進めてきましたが、堂島川沿いのリーガロイヤルホテルの目の前には、その第1号である中之島バンクス(2010年)が船着き場横の遊歩道に沿って展開しています。水上ウェディングもできるレストランや有名アウトドアブランドなど、水辺のライフスタイルに共感するショップが川沿いに並ぶ風景は、すっかり中之島の日常です。
  • さぁ、散策もいよいよ終わりが近づいてきました。中之島の西端、このあたりは港の雰囲気が漂います。明治維新によって中之島の先にある安治川の港が開港し、川口には外国人居留地が設けられました。1931年(昭和6年)には、安治川の右岸に広大な中央卸売市場が設けられて、今も大阪人の胃袋を満たしています。港としての機能は失われて久しいですが、戦前に建てられた大規模な倉庫建築などが残ってその歴史を伝えてくれます。そして今、2025年の大阪・関西万博の開幕を控えて、このエリアがにわかに注目を集めています。万博会場である大阪湾の夢洲と都心を船で結ぶ、水上ルートの構築に向けて中之島GATEターミナルの整備が安治川の左岸に計画されています。そう、川は眺めるだけではありません。中之島には大小様々な船が周遊しています。地上を歩くのももちろん楽しいですが、水面からの眺めはまた違った中之島を見せてくれます。特に中之島には天神橋(1934年)や難波橋(1915年)、淀屋橋・大江橋(1935年)といった戦前から架かる歴史的な橋梁が多く、ライトアップされる壮大な構造美をすべり抜けてゆく体験は、決して他では味わえないものです。
  • 昼と夜、場所や季節によっても大きく変わる中之島、あなたはどの水都に会いにいきますか。

建築家・近畿大学准教授 高岡伸一

  • 建築家・近畿大学准教授 高岡伸一
  • 建築家、近畿大学准教授、生きた建築ミュージアム大阪実行委員会事務局長。大阪の近現代建築の再生を多く手がける。主な著書に『新・大阪モダン建築』(共著、2019)など。


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