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2022.10.14
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SAMURAI ROUTE④ 白川郷
日本の原風景が残る合掌造りの集落

日本の原風景に、溶け込むように佇む美しい合掌造りの家々。
昔話の絵本から出てきたような懐かしい景色が広がる。
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  • Reiko Furuya
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  • 1995年、ユネスコ「世界遺産」に登録された、岐阜県白川郷と富山県五箇山地方の合掌造り集落。四季折々の豊かな自然に恵まれ、独自の文化を受け継ぎながら、今も人々が暮らしている。
  • 本を少し開いて立てたような急勾配の茅葺(かやぶ)き屋根、黒光りした太い梁や柱、釘や金具を一切使わずに荒縄で組まれた構造の美しさに、優れた「芸術作品」を見ているような感覚にとらわれる。しかしそこは雪深く厳しい自然環境と風土から生まれた暮らしの知恵と工夫がぎっしり詰まった場所。雪の重みに耐えうる強固な造り、屋根裏での養蚕、土間での和紙づくり、床下での塩硝(火薬の材料)づくりができる空間利用など、実に合理的な建築になっている。
  • 茅葺屋根の葺き替えは30〜40年に一度、今でも結(ゆい)と呼ばれる地域住民の共同作業で行われている。厳しい自然環境において、昔から助け合い、相手を思い合いながら暮らしてきたのだろう。合掌造りの建築美はもちろん、連綿と続いてきた暮らしそのものの美しさもぜひ感じて欲しい。
  • 稲刈り後の稲架(はさ)かけ、蕎麦の白い花、山々の紅葉......。集落一面が秋色に染まる。ちょうどこの頃、水のアーチを描く「一斉放水」は秋の風物詩だ。やがて初霜や初雪の知らせが届くと、雪囲いをして長い冬に備える。

白川郷 世界に日本美を知らしめた「ホンモノの暮らし」


  • 白川郷は岐阜県内の庄川(しょうがわ)流域の呼称で、岐阜県大野郡白川村と旧荘川村(現在は高山市)にあたる地域。山々に囲まれた田畑の合間に114棟もの合掌造り家屋が立ち並ぶ。同じ合掌造りでも屋根の傾斜度合いや屋根の葺き方、入り口の向きなど、五箇山地域との違いがあり、人々の営みと切り離せないものであることがわかる。荻町城跡(おぎまちしろあと)展望台の眼下に広がる合掌造り集落の眺望は格別。独自の文化が残るこの地には、今も人々の暮らしがある。

五箇山 深い山間の集落に佇む「生きた世界遺産」


  • 五箇山とは、富山県の南西部に位置する南砺市の旧平村・旧上平村・旧利賀村を合わせた地域。この地域が赤尾谷(あかおだに)・上梨谷(かみなしだに)・下梨谷(しもなしだに)・小谷(おたん)・利賀谷(とがだに)の5つの谷からなるため五箇山と呼ばれる。標高1500m級の山並みを縫って流れる庄川沿いには40の集落が点在し、相倉合掌造り集落に20棟、菅沼合掌造り集落に9棟の家屋があり、現在も人々が暮らす。知名度の高い白川郷と比べて、こぢんまりした素朴な雰囲気を味わうことができる。


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