PERSON

2023.07.12
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SPECIAL INTERVIEW "NICOLAI BERGMANN"
フラワーアーティスト
ニコライ・バーグマン
未知の体験こそが発想と活力の源<前編>

21歳でデンマークから単身来日、日本をベースにフラワーアーティストとして活動を始め、今年で25年になるニコライ・バーグマンさん。年間の3分の1は旅に出て日本はもちろん、世界を巡るというニコライさんが長きに渡り、異国の地、日本で活躍し続ける秘訣とは──。
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  • Momoko Yasui
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  • Yoshiaki Tsutsui
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  • 私のフラワーデザインは常に旅からインスピレーションを得ています。出張に出た際でも、必ず1日2日行程に余裕を持たせ、街を歩き、その街からエナジーをもらうようにしているんです。特定の目的地なんてなくたっていい、ただ思うがままに歩いて、街を感じるのです。そうしていると自然に「こんなフラワーアレンジメントがしたい」とアイデアが浮かんできます。旅先ではそのアイデアをスケッチしているのですが、描いた街ごとにスケッチを並べて保管するようにしています。街の印象やそこを訪れた際の自分自身のことも、あとから思い出せるのでとてもいい資料になっています。
  • 私が日本に拠点を構えてから早いもので25年が経ちました。日本にやって来て、最初に私に立ちはだかったのは言語の壁。日中はフラワーショップで仕事をしながら、わからなかった言葉を夜に覚え直し、翌日仕事で使ってみる。ひたすらその繰り返しで、時間をかけて克服していきました。そして何よりも、私の生まれ故郷、デンマークと日本の文化で一番違うところ、それは仕事への向き合い方です。デンマークでは当たり前に家族やプライベートが最優先、一方日本では働く時間も長いですし、仕事を優先させる文化ですよね。最初はその違いに戸惑いましたが、私自身、仕事が好き、花が大好きですから、だんだんとその文化を受け入れていくことができるようになりました。今では日本人よりも働き者だと自負しています(笑)。

うまくいっている時こそ、変化させることが大事

  • 2022年に、箱根・強羅に「ニコライ バーグマン 箱根 ガーデンズ」をオープンすることができました。ここは単に花を綺麗に見せるための庭園ではありません。8,000坪の広大な土地で、自然そのものを楽しめるような庭園にしたいと挑戦を続けているところです。自然はいつも予期できません。春になって緑が茂ってきたと思ったら、どんどん成長して、地面に陽が入らなくなってしまったり、想像以上に雨が多く、植物がうまく育たなかったり。壁にぶつかるたびに、より自然に近い形に沿ってつくっていくほうがいいのでは、と方向転換もしています。花は、もともと箱根で自生していた紫陽花(あじさい)や椿などが育ちやすいのですが、せっかくならユニークな形の紫陽花や黒い椿など皆さんが普段あまり見ることのない品種を植えるようにしました。これからの季節は、北欧デンマークの家具ブランド、フリッツ・ハンセンとコラボレーションして、園内にサンベッドやチェアが設置されていますので、好きな場所で花を眺めながら寛いでみてください。
  • 私が強羅に庭園を、と考えてからおよそ10年が経ちます。自分たちのチームで設計し、地元の人たちに支えられてつくってきましたが、実はその面積の20%ほどしか使いきれていません。まだまだこれから時間をかけて、試行錯誤を続けていくのが楽しみ。ものをつくる時、私は常に変化から刺激を、そしてインスピレーションを得てきているのかもしれません。庭園をつくって変化させ続けるのも、そして旅が好きなのもそのひとつでしょう。
  • 「ニコライ バーグマン 箱根 ガーデンズ」では、好きな場所でピクニックランチを楽しめる。

  • 紫陽花は800株ほど植えられていて、7月中旬から8月中旬が見ごろ。「皆さんがよく知っている、見慣れた紫陽花は1株もありません。珍しい品種の花を咲かせています」

  • 今年、南青山のフラッグシップストアをリニューアルしました。モノや壁を壊し、見通しのいい店舗にしたのです。具体的には花のアレンジメントを制作している人、カフェでフードをつくっている人の作業を表から見えるようにしました。今までは壁でお客さんからは見えないようにしていたのですが、そもそも花やフードって見ていて楽しいもの。それを見せた方がお客さんにとってもいいのではと。「なぜうまくいっている店舗とカフェをわざわざリニューアルするのか」と言う人もいます。けれど私はうまくいっている時こそ、変化させることが大事だと思っています。変化のなかに、未知のもののなかに成功はあるはずですから。
  • 旅のスタイルにも、最近変化をつけるようにしています。以前は同じホテルに何度も泊まったり、好きなブランドのホテルが決まっていたのですが、今は訪れたことのないホテルや、街の小さなシティホテルなどを調べて泊まってみたりします。何度も訪れている街でも、知らなかったいいホテルを見つけると嬉しい気持ちになりますね。

NICOLAI BERGMANN

  • デンマーク、コペンハーゲン生まれ。21歳で来日。2000年にフラワーボックスアレンジメントを考案して注目を集め、今ではフラワーギフトの定番に。ʼ01年『Nicolai Bergmann Flowers & Design』ブランドを設立。現在、国内外に多数店舗を構える。東京・南青山のフラッグシップストアではフラワーデザインスクールも展開。ʼ22年4月、神奈川県箱根・強羅に「ニコライ バーグマン 箱根 ガーデンズ」をオープンした。

【SPECIAL INTERVIEW】

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