2026.07.24
TRAVEL

イラストエッセイ「旅じたくの魔法」
風のいる場所へ

イラストレーター谷山彩子さんのコラム。
今回はどんな「旅」にまつわるエピソードでしょうか?
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  • Ayako Taniyama
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  • 夏の都会は息をするのも大変だ。
  • 照りつける日差し、やけどしそうなアスファルト、唸(うな)る室外機から噴き出す熱風。身体が溶けてしまいそう。空気の止まった部屋では呼吸が浅くなる。
  • 深呼吸の時間が欲しい。
  • 自然の風を探しに行こうか。
  • 早い朝、太陽が本気を出す前にいつもの遊歩道を歩いてみれば、夜のあいだに少しだけ冷やされた空気は、森のような香りの風を運んできてくれる。
  • 夕焼けを眺めに自宅のバルコニーに立てば、一日の熱をゆっくりと冷ます風が、今日もお疲れさまと背中をやさしくなでていく。
  • 心地よい風は、案外すぐそばにもある。
  • けれど、そんな心地よさを知ってしまうと、もう少しだけ遠くへ、風のいる場所を訪ねてみたくなる。
  • たとえば、水面を渡る涼しい風が吹く河原、遠くからやわらかな潮風が届く海辺、風が草を揺らしながら通り過ぎていく高原。
  • 風を探す旅には服装も大切だ。
  • 軽くてゆったり、シャリ感が心地よいリネンのワンピースをさらりとまとい、やわらかな革のサンダルを素足に履いて、ストローハットを頭にちょこんとのせる。
  • すると風のほうからこちらに近づいてくる。まるで旅の話でもするように、ワンピースの裾をさやさやと揺らしてくれるだろう。
  • 旅先で口にするものにも、ふと風を感じることがある。暑い国の知恵を借りて、砂糖のたっぷり入った熱々のミントティーをふうふう飲めば、不思議なことに身体のなかに涼しい風が吹く。お酒なら、キンキンに冷えたグラスに白ワインとソーダのカクテル、スプリッツァーをたっぷり注いで、ライムをひと搾り。目にも喉にも爽やかな風がさあーっと吹く。
  • そして何より、心地よい風に出逢うために大切なのは、スマートフォンをしまうこと。少し手放して、目の前の景色や光だけをじっくりと味わってみる。そこにはきっと、心地よい風が吹き抜ける。
  • 風を探しに、少しだけ遠くへ出かけてみる。
  • そんな気分から、夏の旅がはじまる。

絵と文:谷山彩子(たにやま・あやこ)

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