2026.06.19
GOURMET

熱海で70年以上愛される
老舗洋菓子店「モンブラン」で
伝統のフランスケーキを

旅の途中で立ち寄った店が、その街の思い出になることがある。
熱海で1947年から続く、老舗の洋菓子店「モンブラン」もそんな一軒。

ショーケースに並ぶ素朴なケーキと、訪れる人をあたたかく迎える店の空気には、長い時間をかけて育まれてきた物語があった。
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  • Mei Hiramatsu
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  • Mei Hiramatsu
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熱海で生まれた、フランス洋菓子への情熱

  • 熱海「モンブラン」の外観
  • 「モンブラン」の歴史は、ひとりの職人の探究心から始まった。

    初代パティシエの新田道雄氏は、横浜のホテルニューグランドでフランス料理と洋菓子を学び、1947年に熱海でフランス料理店「モンブラン」を開業。

    当時はまだレストランが中心で、ケーキはコース料理を締めくくるデザートのひとつだったという。
  • ショーケースに並ぶいちごのショートケーキ
  • やがて道雄氏は洋菓子の魅力に惹かれ、1955年に「モンブラン」は洋菓子専門店へと転換。辞書を片手にフランス語の原書を読み込み、独学で技術を磨いた。

    「父は妥協しない人だったんです」

    そう話してくれたのは、現在店を切り盛りする娘の村井さん。
  • 「モンブラン」の店内とケーキが並ぶショーケース
    店頭には毎日10種類ほどのケーキが並ぶ
  • 材料選びにも一切妥協せず、納得できる素材が手に入らなければ使わない。効率よりも品質を優先する姿勢を貫いていたという。

    取材中、何度も耳にした「継承」という言葉。それは単にレシピを受け継ぐという意味ではなく、「父が大切にしてきた考え方そのものを守る」ということだった。

レシピも道具も、父の背中から受け継いだケーキ作り

  • 「モンブラン」のショーケース
  • 現在「モンブラン」の店頭に立つ姉妹のおふたりは、父である道雄氏が残したレシピやメモ、そして長年使われてきた道具を頼りに、少しずつ技術を受け継いできた。

    厨房では今も創業当時から使われているオーブンやミキサーが現役で活躍している。

    「父の背中から学んだ技術、レシピ、道具、全部継承しているつもりです」

    実際、モンブランのケーキには驚くほど手間がかかっている。
  • 「モンブラン」の外観にある看板
  • たとえば季節限定のアップルパイ。既製のパイシートは使わず、粉と塩、水で生地を作りバターを何度も折り込んで層を重ねていく。作業には天然大理石の台を使用するという。

    効率だけを考えれば、もっと簡単な方法はいくらでもある。それでも昔ながらの製法を守り続けるのは、その先にある味を知っているからだろう。
  • ショーケースの中のケーキ
  • もちろん、時代とともに手に入らなくなった材料もあるが、それでも近い素材を探し、試行錯誤を重ねながら味をつないでいるのだとか。店に並ぶケーキは、ただ昔のレシピを再現したものではない。

    受け継いだものを守りながら、今の時代に合わせて磨き続けているのだ。

文豪、谷崎潤一郎も愛した「モカロール」

  • ショーケースに並ぶモカロール
    モカロール(18cm)¥2,240(税込)
  • モンブランを代表するケーキといえば、「モカロール」だ。

    エスプレッソに近いコーヒーの香りをまとったスポンジと、コーヒー風味の軽やかなバタークリーム。近年の華やかなスイーツと比べると素朴だが、その味わいには不思議な存在感がある。
  • テーブルに並んだモカロールとコーヒー
    モカロール¥360(税込)、コーヒー(ビスケット付き)¥590(税込)
  • どこか懐かしく、それでいて今食べても新鮮な味わいのロールケーキ。実はこのモカロール、文豪・谷崎潤一郎にも愛されたことで知られている。
  • 店内に飾られている谷崎潤一郎の写真
    店内に飾られている谷崎潤一郎の写真
  • 谷崎氏はモカロールを気に入り、孫へのお土産として買って帰ったというエピソードも。

    「今も当時とほとんど変わらないんですよ」

    熱海旅行の途中で立ち寄る観光客も多いが、地元で誕生日ケーキを買う家族連れも少なくないのだとか。
  • バースデーケーキ
  • 子どもの頃に食べたケーキを、大人になってまた買いに来る。そんな光景が、この店では特別なことではないのだろう。

伝統のフランスケーキと一緒に持ち帰りたい、熱海の時間

  • ショーケースに並ぶモンブラン
    ヨーロッパ好きだった創業者が、アルプスの山肌と雪化粧を表現したデザインの「モンブラン」
  • 店内を見渡すと、常連客らしき人々がゆっくりコーヒーを飲み、観光で訪れた人が楽しそうにケーキを選んでいる。不思議と誰も急いでいない。
  • 「モンブラン」のイートイン席
    イートイン席は7席
  • 熱海という観光地にありながら、ここにはどこか暮らしの延長のような時間が流れている。

    「皆さんに、また来ていただきたいなと思って接客しています」

    終始笑顔で話してくれた、村井さん。70年以上続く老舗だから愛されているのではない。

    人を迎えるあたたかな空気があり、受け継がれたケーキがあり、店を出る頃には気持ちがやわらかくなっている。
  • テイクアウト用のボックス
    レトロなデザインがかわいらしい、テイクアウトのパッケージ
  • それが「モンブラン」という店なのだろう。熱海旅行で立ち寄るなら、ぜひコーヒーとケーキを頼んでみてほしい。
  • 器にのったモカロールケーキ
  • 伝統のフランスケーキを食べながら過ごす時間は、きっと温泉や海とはまた違う、この街の記憶になるはずだ。

    「心で作る店でありたい。心を売る店でいたい」

    創業時からあるその想いは今も変わらず、ショーケースに並ぶ一つひとつのケーキの中に息づいている。

フランス洋菓子 モンブラン

  • 住所:静岡県熱海市銀座町4-8
    TEL:0557-81-4070
    営業時間:10:00~18:00(※状況により変更する場合あり)
    定休日:水曜日
    atamimontblanc.web.fc2.com/index.html
    ※Webサイトをご確認の上、お出かけください。
  • 「モンブラン」の外観

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