- 旅が決まると、天気予報とにらめっこ。
- 山を歩くようになって、道具ひとつで雨と仲良くなれることを知った。雨でも楽しくなるような旅のしたくは、とても大切だ。
- まず、折りたたみ傘。
- 軽いものなら90グラム。でも、軽ければいいってものじゃない。開いた瞬間に「……あれ?これ、守る気ある?」みたいなサイズだと困るので、お店で開いてしっかり確認。私の選んだ傘は112グラム、直径はだいたい95センチ。これなら濡れずに歩ける。色は白。なぜって、曇り空でも気分が明るくなるように。
- 次は防水スプレー。
- これは、いわば小さな魔法の杖だ。身につけるものにしっかり吹きつける。傘の縁からコートの袖に落ちた雨粒が、ガラス玉みたいにコロコロと滑り落ちる姿のかわいらしさも、楽しい気分を運んでくれる。
- 帽子もいい。
- 手が空くと、それだけで動きが軽やかになる。防水仕様のハットやキャップは、デザインやカラーも色々なので、旅のおしゃれのアクセントにもなる。蒸れない素材なら長時間でも快適だし、折りたためるタイプはバッグにポイッと入れられて気が楽だ。
- 旅先で雨になったら、目的地を変えてしまうのも悪くない。
- 街歩きの「傘の開け閉め」という小さな面倒を避けて、博物館や美術館に逃げ込む。しっとりと落ち着いた心で文化や絵画に向き合うと、晴れた日には見過ごしてしまうような小さな発見に、心が動くことがあるかも。
- あえて外に出ていく手だってある。
- しとしとと静かに降る春雨のなか、梅林を歩いたことがあったけれど、水をまとった植物たちや、濡れた岩肌の輝きが生き生きとして、みずみずしかった。花と緑の香りはいつもより強くて、深呼吸すると、身体の隅々までが喜ぶ、あの感じ。雨は、五感のスイッチをそっと入れてくれる。
- 晴れの日の旅は、それはもう、最高だ。
- でも、雨の日だっていい。
- 必要なのは、少しの準備と、「まぁいいか」だけ。そこが揃えば、空の機嫌がどうであれ、旅はこっちの都合で楽しめる。
絵と文:谷山彩子(たにやま・あやこ)

- イラストレーター。セツ・モードセミナー卒業後、ギャラリー勤務などを経て、フリーのイラストレーターに。雑誌や書籍の挿画、絵本などを手がける。
>シリーズ イラストエッセイ「旅じたくの魔法」

