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2022.04.01
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― 世界を旅する色たち ―
「恋する色彩」第九回 

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  • Erika Matsubara
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  • ―手を伸ばすのが、癖になっていた
    高い空、深い海、広い世界
    すぐそこに見えるけど、つかめないものに

    たしかに、向こう岸まで泳ぎ切るのは息が切れる
    でも、橋がないなら作ればいい

    変わるのはいつだって「今」しかないし
    変えるのはいつだって「私」しかいないから。―


    2022年3月12日、オープンイノベーション拠点であるキングスカイフロントと羽田空港エリアを結ぶ橋「多摩川スカイブリッジ」が開通しました。この橋は、日本が誇る最先端の技術と世界をつなぐ、まさに「架け橋」。その魅力は前回のコラム(※)でご紹介しましたが、この橋の完成をすぐそばで見守り続けたホテルがあります。
    ※― 世界に誇る、日本の伝統色 ―「恋する色彩」第八回

    今回は、そんな「川崎キングスカイフロント東急REIホテル」で世界中の色を感じながら、いつの日かまた始まる、世界旅行への心の準備をしていきましょう。


    恋する色彩
    今日の私が出会ったのは、「世界を旅する色たち」です。


  • 「The WAREHOUSE」をコンセプトとするライフスタイルホテル「川崎キングスカイフロント東急REIホテル」は、ただ泊まるだけではなく、自分らしいスタイルで滞在を楽しめるのが特徴です。


  • 旅の疲れを癒す大浴場やエクササイズルームが完備され、リラックス&リフレッシュはばっちり。また、コワーキングスペースでは場所や時間に捉われず、自由に仕事に取り組むことができます。ここなら、ホテル全体を使って「私だけのステイ」を見つけられそう。


  • フロント&ロビーも、ブルックリンにある倉庫のような質感が活きた自由気ままな空間。クールさとオシャレさを併せ持つ内装で、温かみのあるライトに照らされ、ゆったりとした時間が流れます。「シャンパーニュ(Champagne)」色の広々としたソファに腰をおろせば、そこはまるで海外。遊び心に火が付きます。


  • シャンペンの色をいう「シャンパーニュ」はフランス北東部の地名で、古くからシャンペンの名で知られる発泡ワインの産地です。このシャンペンが有名になったのは1709年ですが、色名になったのは1915年という比較的新しい流行色名です。このようにフランスの色名は、料理やワインに由来するものが数多くあります。

    「ジャワ・グリーン(Java green)」の緑が映えるビジネスラウンジ&カフェエリアへ足を運ぶと、個性的なインテリアや旅を感じる地球儀、子供向けの絵本まで置いてあるので、ついつい時間を忘れて眺めてしまいました。


  • 緑の木々が豊かな国、インドネシア。「ジャワ・グリーン」は国章に描かれた菩提樹の緑をいい、その代表的な樹がベンガル・ボダイジュです。この樹は根が広く大きく枝を張り出すことから、聖樹として民族の統一と調和を表しているそうです。インドネシアの色彩文化は、アミニズムとヒンズー教、仏教文化の色彩観が基本になっていて、多様性を感じる表情豊かなものになっています。色鮮やかに個性を演出するスタイルは、多様性を大切にする川崎市のブランドメッセージにどこか通ずるものがあるかもしれません。

    そしてこのホテルから望む多摩川の景色も、多様性を抱きながら見るたびに表情を変えてゆきます。


  • 「エージアン・ブルー(Aegean blue)」に染まった多摩川と「エジプシアン・ブルー(Egyptian blue)」の空が、穏やかな夜の始まりを教えてくれます。

    ギリシャ・エーゲ海の青に由来する「エージアン・ブルー」は、ギリシャ神話に登場する美の女神アフロディテの瞳の色ともいわれています。 「エジプシアン・ブルー」は紀元前2500年頃にエジプト人が開発した青色顔料で、人類最古の化学染料の一つとされています。人類は、自然界で様々な青を目にしてきました。しかし、黄・赤・茶などの染料は豊富にあるものの、青色を得ることができる物質はわずかしかなくその希少性は非常に高いものでした。ですがこの染料の誕生によって色彩表現が広がり、聖なるナイル川を正確に表現できるようになりました。古代エジプトでは壁画などにもこの色がよく使われていて、現在もヨーロッパでは昔のままの製法で絵具として製造されています。

    さて、ホテルの空間や景色を堪能したところで、そろそろディナータイムにしましょう。前回もお伝えした通り、こちらのホテルには、「多摩川スカイブリッジ」開通を記念した特別メニューがあるそう!
    一体どんなメニューなのか、さっそく注文してみると……


  • どどんっ!と登場したのがこちら。その名も「ベーコンブリッジバーガー」。
    「多摩川スカイブリッジ」の開通に合わせて誕生しただけあって、そのダイナミックさは想像以上。シェフ曰く、本体から大胆にはみ出ている「ハバナ・ローズ(Habana rose)」色のベーコンを「多摩川スカイブリッジ」に見立てているそうです。たしかにこの長さ、「多摩川スカイブリッジ」を彷彿させますね。
    キューバの首都ハバナは葉巻の本場で、この「ハバナ・ローズ」はその葉巻の褐色をいいます。薔薇と葉巻、全く違うようでどこかゴージャスな組み合わせ。奥ゆかしさと大胆さを併せ持つカラーでもあります。


  • ん~このボリューム感は思わず写真に収めたくなります。笑顔で写っていますが、お皿の重さで腕がプルプルと震えていました(笑)。 思い切りガブリといただくと、ベーコンの香ばしさとバンズの優しい甘みが口いっぱいに広がります。パティは100%アメリカンビーフで、純粋な牛肉の香りとジューシーさを楽しむことができます。こっくり食感のアボカドと、刻みピクルスの歯ごたえが心地よく、厚みのあるトマトとスライス玉ねぎがフレッシュな後味を演出します。 お腹を空かせて一人で食べるもよし、切り分けてからシェアしてもよし、食べられる「多摩川スカイブリッジ」はここでしか出会えないかも♪


  • そしてハンバーガーと一緒に楽しんだのは、「キングスカイ」と「リバーマウス」。
    背の高いグラスに注がれた「キングスカイ」は、ライチリキュールをベースにした苦みの効いた大人カクテル。英語の空色「ホライズン・ブルー(Horizon blue)」で、キングスカイフロントを包み込む空を表現しています。


  • 多摩川の河口をクリーミーな泡で感じる「リバーマウス」は、「ケンブリッジ・ブルー(Cambridge blue)」。この色は、イギリスのテームズ川で行われる伝統のボートレースの時にも用いられる、ケンブリッジ大学のスクールカラーです。
    しっかりとしたライチの甘みの中に柑橘系の爽やかな味わいを楽しめるノンアルコールカクテルで、お子様にも安心。
    空の広さと川の美しさを謳ったすがすがしいカラーで、目にも楽しいドリンクです。

    そして忘れてはならないのが、何といってもスイーツ。「クロワッサンワッフル綿雲仕立て アールグレイのシロップ添え」は、5色のわた雲がランダムで登場します。
    この日は「アイスグリーン(Ice green)」で、可愛らしいカラフルな金平糖がトッピングされていました。氷山の裂け目にみえる緑とも青ともいえない色のことをさす、透明感のある「アイスグリーン」。諸説ありますが、ドイツ語でカワセミの羽の色をいう「アイスグリューン(Eisgrun)」に由来するといわれています。

  • 「多摩川スカイブリッジ」のスカイに浮かぶわた雲をイメージした綿あめに、アールグレイの香り豊かなシロップをかけていただきます。かろやかで繊細な綿あめは、口に入れたとたんにすっと溶けていきます。実際に雲を食べられたらこんな感じなのかしら…。

  • 綿あめを食べすすめてゆくと、ひょっこり顔を出すのがイタリア語でキャラメル色をいう「カラメッロ(Caramello)」をしたクロワッサンワッフル。クロワッサン生地をワッフルメーカーで焼いた、サクふわ食感が嬉しいデザートです。甘酸っぱいベリーと甘さ控えめなホイップクリームをからめて食べれば、何ともロマンチックな味わいです。

  • 甘い幸せに包まれ、心もからだもほろ酔い気分でうっとりしてくれば、色で味わう世界旅行もそろそろおしまい。


  • ふと窓の外に視線を移すと、遠くに瞬く色とりどりのライト。羽田空港の滑走路が鮮やかに彩られ、ここではないどこかへ向かう飛行機を送り出しています。


  • コートも羽織らずテラスへと飛びだすと、彼方から届くジェットエンジンの音が心地よく上空を翔けてゆきます。まるで一足早く明日へと向かっているようで、少しさみしくて少し羨ましい。そこにはどんな世界があって、どんな出会いがあって、何色の空が広がっているのでしょう。

  • 世界をつなぐ、明日をつなぐ、未来をつなぐ「多摩川スカイブリッジ」。
    ここから生まれる沢山の物語を、あなただけの色でずっとずっと、紡いでゆけますように。
    今はまだ知らない私たち、でもいつか出会える私たち。
    「色」という文字のない手紙で、あなたが見ている空の美しさを、教えてほしい。

    そう願いながら、夜に溶けてゆく飛行機に小さく手を振り

    「いってらっしゃい」。


    恋する色彩。きっと私は、明日も恋をするでしょう。


  • PHOTO:Shinsuke Sugino
    参考文献…『色の名前事典507』(著:福田邦夫、発行:主婦の友社)、『色の知識-名画の色・歴史の色・国の色-』(著:城一夫、発行:青幻舎)、『色 世界の染料・顔料・画材-民族と色の文化史-』(編:アンヌ・ヴァリション、発行:マール社)、『イタリアの伝統色』(著:城一夫、発行:パイ インターナショナル)、『フランスの伝統色』(著:城一夫、発行:パイ インターナショナル)


― 世界に誇る、日本の伝統色 ―「恋する色彩」

「恋する色彩」

松原江里佳


  • 松原江里佳(フリーアナウンサー)
    1989年5月5日生まれ。東京都出身。
    札幌テレビ放送でアナウンサーを務め、2015年フリーアナウンサーに。現在は日本テレビ「news every.」リポーター、FMヨコハマ「COLORFUL KAWASAKI」にレギュラー出演の他、日本テレビ「踊る!さんま御殿‼」、「今夜くらべてみました」等のバラエティー番組にも出演。テレビやラジオ、イベントの司会など様々な場で活躍。色彩検定1級、カラーセラピストの資格も持つ。
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