TRAVEL

2019.04.26
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DEEP TRADITION, COLORFUL INNOVATION "KYOTO"
千年の風を感じに
もう一度、京都へ

西山に風が走ると、竹が光の擦れ合う音で鳴る。
風は嵐山から東へ向かい、伏見稲荷大社の千本鳥居を涼やかにくぐり抜け、さらに北へ。
祇園の町家のいくつもの簾をやさしく揺らしたあと、 比叡山、その先の琵琶湖の方角へ流れていく。
京に吹く千年の風。
風は遥か昔から今日まで、このまちの何を見てきたのだろう?
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  • Akira Uemura
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  • Hiromichi Kataoka
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「手ごろなのは五号やね」 ーーでしょうね、やっぱり

     
  • 連なる鳥居の朱が、早春の木洩れ日を受けて際立つ。
    「おいなりさんの鳥居が赤いのは、なぜ?」
    子どものころ、母にそう尋ねたのを思い出した。全国どこの稲荷神社でも、鳥居は朱色。
    魔除け・厄除けの色だという。主原料は丹(水銀)を含むから木材の防腐のためにも用いられてきた。「稲荷塗」 と呼ぶのだそうだ。
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  • 伏見稲荷大社
    日本に約3万ある稲荷神社の総本宮。 和銅4年(711)2月初午の日に、 御祭神・稲荷大神が、京都東山の南端、 稲荷山に鎮座した。「衣食住ノ太祖ニシテ萬民豊楽ノ神霊」として、奈良時代から現代に至る。

  • 重要文化財の本殿には、稲荷大神の神徳(神の力)から生まれた五柱の祭神が相殿されている。我々・庶民がその神徳を神様から頂戴するのが、「御利益」。五穀豊穣、商売繁盛、家内安全、芸能上達、諸願成就......伏見稲荷 大社の御利益はとても多い。
  • 本殿からすぐの千本鳥居、そして1時間半ほどかけて登り切った頂上・一ノ峰まで続く鳥居の数は、禰宜さんによれば、「1万基前後ですな」。
    鳥居を献ずると願いが「通る」。願いが通ったら、鳥居をより大きなものに代えて奉納するという風習は、江戸時代に始まったらしい。五号17万5000円、と立て札。六、七......と続き、 十号は130万2000円〜也。
  • 「手ごろなのは五号やね」
    初老紳士がこちらをちらり。春色コートの仕立てがいい。
    ーーでしょうね、やっぱり。
    「けど、数年は待つそうや(笑)」
    願いをかけ、願いがかなった庶民たちで賑わい続け、大社さんは京都随一の名所となった。壮観な一万基を眺めていると、たとえ数年待っても奉納したい気分になる。
  • 2時間弱稲荷山を歩くと、お腹が空いてきた。お昼は祇園で「究極の銀シャリ」と評判の米料亭「八代目儀兵衛」で、自慢のブレンド米「翁霞」の炊きたてをいただく。
  • この米の甘さ!うまい!

  • 次の京都迎賓館見学まで、時間がある。宇治のいい煎茶を買いに茶商に寄ろう。
    祇園辻利」はすぐ近く。
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神域・稲荷山巡拝をおすすめ
伏見稲荷大社

  • 全国約3万社といわれる稲荷神社の総本宮。神域である稲荷山は標高233メートルで1周約4キロ。千本鳥居を抜け、山頂までの半ばあたりにある「四ツ辻󠄀」からは、京都市街を一望できる。 山頂に向かうにつれ、あちこちに見られるのが「お塚信仰」。稲荷神を信仰する人たちが私的な守護神として思い思いの名前を付けて「お塚」を奉納しているのが楽しい。口コミサイトでは、変わらず外国人が選ぶ日本の観光地第1位の座を堅守。
    住所:京都市伏見区深草薮之内町68
    TEL:075-641-7331
    http://inari.jp/

最高の米を最高の状態で
米料亭 八代目儀兵衛 京都祇園

  • 代々京都で米屋を営んできた米屋が「米を仕入れて販売することだけでいいのか?」と疑問を持ち、米の目利きとして、米を選び、精米し、ブレンドして「最高の米」として通販したのが始まり。橋本隆志社長の精神は「不易流行」そのものだ。その後、「最高の米を最高の状態で食べてもらいたい」と、料理人の弟・晃治さんと始めたのが、米料亭。3年かけて開発した土鍋炊飯釜で炊きあげる「銀シャリ」は、炊いてから10分以内のものしか出てこない。口に入れた瞬間に甘さがいっぱいに広がる幸せを、人気の「三色御膳」(税込2,440円)のお造り、 焼き魚、天ぷらとともにどうぞ。ランチは予約なしでも入店できるが、行列に並ぶことも覚悟の上で。
    住所:京都市東山区祇園町北側296
    TEL:075-708-8173
    http://www.okomeya-ryotei.net/

宇治茶ひと筋、祇園で60余年
祇園辻󠄀利 祇園本店

  • 万延元年(1860)創業、屋号を初代・辻󠄀利右衛門の名より「辻󠄀利」とし、宇治茶の製造と販売がスタート。のち に京都・祇園を礎とすることから、「祇園辻󠄀利」と改名。 祇園に店を構えて60余年、宇治茶のみにこだわり続けてきた。宇治茶は、京都土産としてもちろん最適だが、「煎茶ひとつとっても、甘みや濃さ、後味など、さまざまな個性があります」と、熱田展弥店長。お店で、自分の好みを相談し、試飲してから購入できるお茶選びが楽しい。左写真は上から、抹茶「長久の白」、煎茶「つじり八十八夜」、玄米茶「大黒」、ほうじ茶「古都かをり」。折り紙のように開く箱の裏側には、それぞれのお茶の「おいしい淹れ方」図解入り。京都らしいおもてなしだ。
    住所:京都市東山区四条通祇園町南側573-3
    TEL:075-551-1122
    http://www.giontsujiri.co.jp/saryo/store/kyoto_gion/

  • ※この記事は「COMFORTS」2017年2・3月号の転載です。

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