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2020.12.21
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永妻信人
流行の中心地、渋谷から料理を通して
発信したいこと

2018年9月、旧東横線の渋谷駅跡地周辺にオープンした、渋谷ストリーム。
目の前には渋谷川が流れる4階のダイニングエリア「Bar & Dining TORRENT(トレント)」では、フランスの星付きレストランで研鑽を積んだ料理長、永妻信人さんによる”日本を感じさせる”料理が楽しめる。
「激流」の意味を持つ” TORRENT”から、 永妻信人さんが料理を通して世界へ発信したいこととは?
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  • COMFORTS編集部
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日本の食材や和の要素を取り入れ、フランス料理の技術で

  • ”ストリーム”は「流れ」「せせらぎ」を意味していて、ホテルではゆっくり寛ぎ、ゆるやかな時間を過ごしていただきたいという思いが込められています。

    逆に”トレント”が持つ意味は「激流」です。廊下には藤田二郎氏のアート(スクランブル交差点をモチーフ)があり、バーには音楽が、レストランには料理があります。

    そしてゲストであるお客様がいて、これら4つが交差し交わることで新しいものが生まれ、川の流れのように渋谷から世界に発信したいという思いが「トレント」には込められています。

    料理に関しては、僕は海と焼き物の街である愛知県常滑市の出身で、小さい頃から魚介類が大好きで、器への興味がありました。

    故郷のDNAを大事にしていて、例えば八丁味噌や西尾の抹茶など、できる限り日本の食材や和の要素を取り入れ、フランス料理の技術でお客様に美味しい料理を出したいというのがコンセプトです。

    器も基本的には日本のもので、美濃の器などの和食器や硝子やオリーヴの木、大理石など使用して料理を表現しています。

    料理以外にもデザートもこだわっていますね。竹墨を使用したデザート「墨(SUMI)」や、奄美大島の天然の黒糖を蜜に使用した「プリンアラモード」など、日本中のどこにもないくらい独創的で、ホテルでありながら他の店舗にはないスタイルだと思います。
  • Bar & Dining TORRENT(トレント)

料理の技術だけでなく、色々なフランス文化を知りたかった

  • 料理人になりたいと思ったきっかけは、小さいときから両親が共働きで、自分で料理を作る機会が多かったことが大きいです。中学生のときには「料理人になりたい」と思っていました。

    高校生のときに調理師学校に入り、授業の中でフランス人シェフ、ジョエル・ロブション氏のビデオを観て「生き物の命をいただく料理人の仕事は尊い。素材のすべてを活かして、美味しい料理を作ることが料理人の使命であり役割だ」と語る姿を見て感銘を受けました。

    ジョエル・ロブション氏のようになりたい、フランスへ行きたい、と思ったのがフランスに修行に行ったきっかけです。

    18歳で調理師学校を卒業し、20歳で初めてフランスへ旅行に行き、フランスに着いたその日に、当時世界一の料理と言われていた「ジャマン」というジョエル・ロブション氏が経営するレストランに足を運びました。

    あの食事の感動は、今でも忘れられませんし、本当に美味しかったですね。実際にフランスの空気に触れ、働きたいという情熱がさらに湧き、その瞬間にもう一度勉強してこの地に来ようと決意しました。

    3年後の23歳のときに念願のフランスに渡り働き始めましたが、外国ということもあり、最初は言葉の壁と人種差別に戸惑いました。しかしそんな苦しい環境でも感じたのは、日本から来た僕の姿をシェフは「しっかり見てくれている」ということ。

    フレンチが大好きで料理技術だけ持って帰ることはしたくなく、色々なフランス文化を体験しようと思っていました。休みの日にはさまざまなところに行き、言葉も少しずつ覚えていきましたし。滞在中は辛いこともたくさんありましたが、見てくれている人は評価してくれたので多くのことが刺激になり、学びでした。その経験が今のレストランにも生きていると思います。

自分が作る以上は、体に良いものを作って提供したい

  • 「トレント」に来て下さるお客様のことは「家族」だと思っています。恋人や恩師、両親や子供に食べさせたいものを、提供したいんです。

    「食」が人間の体を作るので「安いから良い」ではなく、自分が作る以上は体に良いものを作るのが大切だと思っています。

    そのためには生産の背景を知ることも大切で、開業前から、出来る限り生産者さんのところへ行くようにしていて。例えば無農薬の農家さんへ実際に行ってみると、食べ物を大切にされている姿にインスピレーションを感じますよね。

    「自分や、自分の子供たちに食べさせたいから」と同じ志で頑張っている生産者さんの食材を適正な価格で買って、お客様に提供することで応援したい。無農薬の野菜は、大きさはバラバラでも美味しいですから。

    料理は、食べる人のことを想って作るもので、想いを込めることが一番重要だと僕は思っています。高級な食材を使わなきゃいけないなんてことはなくて、食材はシンプルでも、想いや愛情がスパイスになります。各ご家庭で、毎日自分の愛する人のために料理することはとても素晴らしいことだと思っています。

    僕はお客様が喜んでいる顔を思い浮かべてメニューを考えることが、料理に対する情熱に繋がっています。

NOBUTO NAGATSUMA

  • 23歳で渡仏、本場フランス料理を各地で学んだ後、セルリアンタワー東急ホテルに入社。技術研鑽の為料理コンクールにも積極的に出場しグランプリをはじめ多数入賞後、40階メインダイニング「クーカーニョ」のシェフを9年間務める。その技術と才能で多数の著名人を魅了してきた。現在は「バー&ダイニング トレント」で料理長として「日本を感じさせる」スタイリッシュな料理を発信。

Bar&Dinning TORRENT

  • 2018年9月にオープンした渋谷ストリームエクセルホテル東急。フロント・ラウンジとシームレスに繋がる「TORRENT」のダイニングエリアでは、フランスの星付きレストランで研鑽を積んだ永妻信人による、こだわりぬいた食材と器がイマジネーションと融合した、五感で感じる料理を堪能できる。
    .tokyuhotels.co.jp/stream-e/bar_dining/index.html

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