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2022.09.16
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― メッセージ ―
茶のもてなしの文化に触れる

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  • Shinobu Nakai
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  • Makoto Ito
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  • 2022年7月、京都・東山に開業した「THE HOTEL HIGASHIYAMA」の根底にあるのは、日本人が大切にしてきた伝統文化。茶器などを制作する粟田焼発祥の地という歴史的背景もあって、工芸や茶の文化にはとりわけ力を入れています。そんなホテルの想いを体現するのがロビーにあるTea & Bar「Sarei produced by Gion Tsujiri」。プロデュースを手掛けた宇治茶の老舗、祇園辻利の三好正晃社長と、東急ホテルズの村井淳社長、ホテルの小川原照枝総支配人が、茶文化とホテルについて意見を交わしました。

    三好
    このサロンのSareiという名は、禅宗でいうところのお茶の作法(茶礼)のこと。3時のおやつ時に皆でお茶を分け合い心身を休めたそうです。僧侶たちもそうであったように、この場でお庭を眺めながらお茶を一服味わうことで、心寛ぐ時間を過ごしていただきたい。そんな想いを込めました。

    村井
    このホテルが大切にしていることのひとつに「お茶のおもてなし」があります。祇園辻利さまとコラボレーションさせていただくことが、何よりホテルの姿勢を示しています。祇園に開業されて70余年。その老舗にお茶の楽しみ方だけでなく、お茶のもてなし方についてもお教えいただければと思っています。


  • 株式会社祇園辻利 代表取締役社長 三好 正晃


  • 小川原
    この場所こそがホテルのキープレイスです。ここでは煎茶やほうじ茶、お抹茶などさまざまなお茶を味わえます。私たち日本人は日常生活でもお茶を飲みますが、温度や淹れ方でお茶の味が変わることを案外知らないのだと、今回改めて思いました。敢えて宇治茶をご提供することで、お客様にも本来のお茶の美味しさを感じていただければと。そして、お茶のもてなしを勉強させていただくことは、ホテルの従業員にとって貴重な経験ではないかと思います。

    三好
    お茶のもてなしは決して難しいことではありません。「日常茶飯」という言葉があるように、日常にお茶とご飯がある。古来、日本人はお茶を飲んできました。ところが1970年の大阪万博の頃からでしょうか、それがコ ーヒーなどをはじめとする西洋の飲み物に変わってきました。お茶が忘れ去られるようになってしまったのです。この場所が今またもう一度、原点に返ってお茶の素晴らしさを感じていただくきっかけになればと思っています。ここで美味しいお茶を味わった記憶が、自宅に帰られたあとも京都に来た思い出のひとつになる。家でも自分でお茶を淹れて飲むことにつながるのではないでしょうか。


  • 株式会社東急ホテルズ 代表取締役社長 村井 淳


  • 村井
    東山のホテルでは、もてなしや文化を体験していただくことも大きなテーマです。粟田口というこの場所には粟田焼という焼き物があり、茶器なども作られていました。それらを展示することで、歴史を知っていただくことにもなると考えております。

    三好
    そうですね。神社仏閣など歴史ある建造物を見ることも楽しみですが、同じように大切なのは、地元の人の暮らしを感じることです。町並みや何気ない京都の人の暮らしに触れて歩くことこそ旅の醍醐味。お茶を味わうこともそのひとつです。

    小川原
    この新しい「THE HOTEL HIGASHIYAMA」は、ここを拠点にして洛中、洛北も巡ることができる滞在型のホテルです。部屋の中でも朝食でもほうじ茶をお出しし、京都の暮らしを少しでも感じていただけたらと思います。和食メニューにはおばんざいもご用意しました。千鳥酢や近所のお店のお豆腐など、東山に住む地元の方が召し上がっているものを使います。京都の日常の味がここにはあります。


  • THE HOTEL HIGASHIYAMA by Kyoto Tokyu Hotel 総支配人 小川原 照枝


次の時代に向けて
伝統を守る心と改革する精神


  • 村井
    祇園辻利さまはボトリングティー「茶零(されい)」をはじめ、お茶のパッケージデザインなどビジュアルにも時流を取り入れ、付加価値をつけていらっしゃる。老舗でありながら、常に前進される姿勢や工夫に感銘を受けます。

    三好
    お茶を楽しむ、あらゆるスタイルを常日頃から考えております。お茶の葉は缶に入れられて販売していましたが、2011年にアンケート調査をしたところ、8割の方はお茶の缶を捨てるとおっしゃった。缶は光をとおさず、湿気をよせつけない。けれど、今は保存容器も多種多様にあります。缶でなくてもいいのです。ならば、風呂敷をイメージした一枚の紙を織って茶葉を包もうと思ったんです。中にはお茶の美味しい淹れ方が印刷されています。大切なのは、美味しいお茶やその文化を時代に合わせながら残していくこと、継いでいくことなんですね。

    村井
    茶の道も追求されるが、一方では柔軟に新しいお茶を提案される。ぜひこうした姿勢を見習いたいと思います。今年、東急グループも創立100周年という節目を迎えました。伝統を守りながらも革新を繰り返してこられた祇園辻利さまのように、私たちも新しいアイデアでもてなしの幅を広げていきたいと思います。

  • ホテルの中庭に面して開かれた窓の側、ゆったりとしたカウンター席に座るだけで、心が落ち着き和んでいく。

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