INTERVIEW

2022.03.04
INTERVIEW

SPECIAL INTERVIEW "Manami Honjo"
本上まなみ
「旅するように京都に暮らす」

子育てをするにあたって自然が近い場所で暮らしたいと京都へ移住した本上まなみさん。時間の流れや自然の営みにあらがわず日々を送っていると言います。
「旅のなかで自分の居所を探していた」と言う本上さんの京都暮らしを通じて感じることや日常にある発見、家族旅行の思い出や旅への想いについてお聞きしました。
  • TEXT
  • Shinobu Nakai
  • PHOTO
  • 福森クニヒロ
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  • 京都の短大に通っていたこともあって、京都は以前から馴染のある場所でした。講義の合間に時間があると、今日はどこの神社やお寺に行こうかと迷い、お友達とあちこち町歩きを楽しんでいたんです。その頃モデルのお仕事をしていましたが、京都での撮影も多く、東福寺など撮影現場にも自分で出向いていました。そういう意味では土地勘は養われていたのかもしれません。

  • 結婚して子どもが生まれ、どこで子育てをしようかと考えたときに、夫や私の実家からも近くて、三世代で交流できる場所がいいと思いました。親対子どもだけよりも、周りに複数の目があるほうが、子どももどこかで息抜きできるだろうと思ったんです。

  • そこで選んだのが、双方の実家の中間に位置する京都でした。実際に暮らしてみて改めて感じたのは、自然がそばにあるのに都市の機能や文化もある町だということ。四季折々の行事もはるか昔から受け継がれていて面白い。

  • 京都は四季を感じること、自然のなかで遊ぶこと、そして歴史に触れることを、わざわざ出かけなくてもできる場所なんです。それらを子どもたちと一緒に体験していくことで、学生時代とはまた違う視点が生まれました。8年暮らした今も、まだまだ知らないことがたくさんあって、それを肌で感じられると思うと嬉しくなります。

  • 中庭を望む、京都東急ホテル「ティーラウンジ&バー ほりかわ」のソファ席で。壁や柱に描かれるかな文字アートは、たゆまなく流れる中庭の滝の流れやはんなりとした時間の流れを表したもの。「古典を写したかな文字の美しさが際立っていますね」と本上さん。

千年の都の営みを感じられる、京都で日常を過ごすこと

  • 実際に京都で暮らすようになって早起きになりました。生活そのものも変わりました。東の山からお日様が出て西に沈むまで、山の色が変わる様子を見られる生活。平安時代の人々が見ていた情景を私たちも見ているんだと思うと、なんだか不思議なようで。清少納言や紫式部が書き残したものを見ても、「これはあの場所なんだ」と頷けるのです。京都は夜になると周囲は真っ暗。何かが出てきそうな夜の暗闇の怖さを、子どもも自分で感じてくれればと思います。

  • 家の周りには小さな商店がたくさんあります。朝9時になったら近所のお豆腐屋さんのお豆腐ができあがるとか、パン屋さんで焼きたてを買って毎朝食べられるとか。そんな隣近所とのお付き合いも京都にはまだ残っています。町にやってくる振り売りの農家さんから野菜を買って、新鮮なうちに料理をしています。

  • 夫の実家がある滋賀県にも2週間に一度は出かけて、義母の畑づくりを手伝います。自分で野菜をつくるようになると、自然にはあらがえないと気づきます。例えば、3月になったらじゃがいもの種いもを植えて、育ったら採って食べる。お水や日差しが足りないのではとやきもきしなくても、ちゃんと雨も降るし陽も当たって育ってくれる。待つことが大切なんだと、野菜づくりを通して知り、「子育てもそのように」と思うようになりました。

  • 子どもには好きなことをさせたいと思いますが、つい勉強のことなども心配してしまいます。けれどそんなにあせって教えなくても、子どもって自分自身で考えて時間配分ができ、いろいろな感覚も身につくんですよね。そんなゆっくりした時間の流れを楽しめる今の年齢で、この町に暮らすと決めてよかったとしみじみ思います。

旅するたびに探していた自分の将来の居場所

  • 私が自然を好きになったのは、子どもの頃に家族で行った旅の影響もあるかもしれません。毎年夏休みになると、その頃家にいたうさぎや亀や小鳥も、みんな一緒に車に乗って大阪から母の実家の山形に出かけていました。景色を見ながら日本海側を北上していくその旅が本当に楽しかった。

  • そういえば、その頃から水のきれいなところが好きでした。室町時代から岐阜の郡上八幡に湧く宗祇水(そうぎすい)や北海道の羊蹄山(ようていざん)の噴きだしの水に惹きつけられました。京都に惹かれたのも水のきれいさがあるからでしょうね。町の地下にたくさん水が流れていて、染め物やお酒づくりに活かしている。歴史の神秘を感じます。

  • 京都は市街地だけでなく、美山や洛北にも素晴らしい場所がたくさんあります。茅葺(かやぶき)屋根など懐かしい景観が保たれていて、川の水も澄んでいて。子どもと一緒に川の中にいる生き物を観察する時間は、かけがえのないものになっています。

  • 今思うと「自分は将来どこに住むんだろう」と旅に出るたびに思っていました。いつもそこに住む人の視点になるんです。どこへ行っても市場を見たり、朝市を覗いたり。人々がどんなものを食べてどんなことをしているのか、普段の日常に興味があって。きっと自分の居場所探しのように旅を捉えていたんでしょうね。

  • 面白いことに、子どももすでに将来の住処(すみか)を決めているんです。数年前に、家族でパラオに行ったんですが、興味深い旅になりました。息子は小さい頃から魚を見るのが好きで、自然があって魚もたくさんいるパラオの環境にハマったようです。将来はパラオに住むそうです(笑)。

  • 私は旅の都度、泊まるところは目的に合わせて選んできました。例えば東京だったら眺望がきれいな高層ホテル、島に行くなら地元の方が営む民宿に泊まって、そこの家族と仲良くなる。パラオならすぐに海に出られる平屋のコテージといった感じでしょうか。旅先に合わせてガイドブックを見ながらホテルを選ぶのも楽しい時間ですから。

  • 京都東急ホテルにも仕事の打ち合わせやプライベートで何度かうかがいましたが、静かで落ち着く空間がいいですよね。地上のエントランスからロビー階に下りていく。その導線がいいんですよね。エスカレーターを降りると、中庭が目の前に広がり水音が聞こえてきます。京都駅から近くなのに、入った途端「ここはどこなんだろう」と思わせられるような、気持ちのスイッチが切り替わるような。開業してから40周年とお聞きして驚いたほど新しさも感じられます。京都市街には楽しいものがあってワクワクするので、観光からホテルに帰ってきてクールダウンできる。そんな居心地のよさが魅力ですね。

  • 地上のエントランスからエスカレーターで下りたロビーフロアは、吹き抜けになった高い天井までの柱と煌くアート、格子を思わせるシェードが印象的な京都東急ホテルを代表する空間。一面のガラス窓の先には光溢れる中庭が開け、流れる滝や石造りの川、端正な竹林が古都の風情を彷彿とさせてくれる。

  • 京都東急ホテルの7階はデラックスフロア。その中のエグゼクティブ トリート《ジュニア スイート》は、モダンな和をコンセプトにしたゲストルーム。柔らかな光に包まれる空間となっている。

好きな場所は植物園と平等院、そんな京都をまだまだ知りたい

  • 京都府立植物園は、家から近いこともあって、家族でよく出かける憩いの場です。人工的な美しさではなく、いかに植物を自然に見せるかという工夫がさり気なくなされています。広々としていてのびやかに樹々が生えている。ここでは人々が思い思いにゆったり過ごしている空気感があります。植物園から見る景観や日本の古い植物園のスタイルをそのまま保っているところに、町の余裕を感じます。

  • 宇治にある平等院ミュージアム鳳翔館も大好きな場所です。いろんな仏様が雲に乗っていらっしゃる尊いお姿を見ると、幸せな気持ちになります。

  • 京都の人たちと仲良くなると、よくいわれる「京都人の新しいもの好き」は本当のことなんだと実感します。歴史のある町だからこそ、新しいものにも敏感で進化や革新を怠らない。そのメリハリが面白いと思います。

  • 京都暮らしをしていても、いまだにどこか旅を楽しむ感覚もあります。腰をじっくりすえて、もっとこの歴史ある町を深く見ていければいいな、そう思いながら生活しています。




  • styling=Nakako Ikeda
    hair & make-up=Yoko Sasaura

  • ブラウス¥71,500、スカート¥59,400(ともにストラスブルゴ)、ピアス¥354,200(ドレット/すべてストラスブルゴ カスタマーセンター 0120-383-563)、シューズ¥95,700(セルジオ ロッシ/セルジオ ロッシ カスタマーサービス 0570-016600)

Manami Honjo

  • 1975年生まれ。俳優として数々の映画、ドラマ、CMなどで活動するほか、NHK「あさイチ」、NTV「遠くへ行きたい」、TBS「世界ふしぎ発見!」などに出演中。エッセイストとしての評価も高く、ミシマ社のウェブマガジン『みんなのミシマガジン』内の連載エッセイ「一泊なのにこの荷物!」では夫とのリレー連載が話題に。現在は京都に在住。



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