COLUMN

2022.01.07

私流アート鑑賞#6 山種美術館「奥村土牛」展と、
日本料理店のアフタヌーンティー

三原 勇希 written by 三原 勇希
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  • 全国的にぐっと冷え込んだ年末年始、いかがお過ごしでしょうか?
    私にとって2021年は新たなジャンルのお仕事に色々と挑戦できた一年になりました。挑戦に失敗や試練はつきものですが、そうやって時にはヒリヒリしながら頑張っているほうが私は好きです。そんな日々の中で、アートを見る時間は本当に癒やしでした。そして今回は、私にとって未知の世界「日本画」を見に行ってきましたよ!




  • 山種美術館は、恵比寿駅から広尾の方へ徒歩12分。何せ都心なのでその存在には気づいていましたが、なかなか足を踏み入れるきっかけがなかったところです。日本初の日本画の専門美術館で、そのコレクションは約1800点にも上る充実ぶり…ですが、日本画の定義もよく知らない私には少し敷居が高く感じていました。
    その敷居を超えさせたきっかけが、日本料理のアフタヌーンティー。
    アフタヌーンティーって、あのイギリスの、三段のお皿に乗ったスコーンやセイボリーですよね…?


  • セルリアンタワー東急ホテル 日本料理「Japanese Cuisine 桜丘」にて撮影


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  • この写真はセルリアンタワー東急ホテル内にある日本料理「Japanese Cuisine 桜丘」のアフタヌーンティーセット。アフタヌーンティーの文化を踏襲しながら、中身は日本料理というこちらに私は興味津々。この「桜丘アフタヌーンティー」と、山種美術館のチケットがセットになったコラボレーションプランがあると聞いて、それなら!と、足を運んだというわけです。

    このセットプランでは、まず山種美術館を訪れてから、アフタヌーンティーで余韻に浸るという順番がおすすめとのことでまずは山種美術館へ。




  •  
  • 私は初めて訪れましたが、昨年で開館55周年を迎えた山種美術館。
    現在開催中の展示は日本画家・奥村土牛の展覧会です。
    創立者の山﨑種二氏は早くから土牛の才能を見いだし、彼の作品をコレクションしてきたそうです。半世紀にわたって家族ぐるみで親交を深めてきたこともあり、ここでは質・量ともに最高レベルの土牛コレクションが見られるとのこと。私はこの日初めて土牛さんの絵に出会ったのですが、それはとても親しみやすいもので驚きました。

    日本画というと漠然と、水墨画とか、掛け軸や屏風に描かれたようなものをイメージしていたのですが…

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  • あったあった、掛け軸!


  • 「蛤」 (1949年) 山種美術館

  • ハ、ハマグリ…!
    ハマグリの掛け軸なんてありなの…?!
    なんかイメージと違う…かわいい…


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  • うわぁ、羽がフッワフワ…!

  • 「餌」 (1936年) 山種美術館

  •  
  • 触りたいくらい、感触が伝わる…!


  • 「兎」 (1936年) 山種美術館

  • 今度はフッワフワの白うさぎ…かわいい…!
    と、思わず「かわいい!」と声をあげてしまうような作品が次々と目に飛び込んでくるんです。
    いきものたちの愛らしさがよく伝わる、繊細な筆致が写真ではお伝えできないのが本当に残念…!そう言えばお名前にも「牛」と動物の名前が入っていますね。


  • 「山羊」 (1951年) 山種美術館


  • 「土牛」は本名ではなく雅号で、「土牛石田を耕す」という中国の詩の一節からつけられたそう。 「牛が荒れた田畑を根気よく耕し、美田に変えるように一歩ずつ精進を続けなさい」という意味で、土牛の画家人生は、まさしくその名を体現したようなもの。名誉を得ても学ぶことや探求を怠らず、老年になってからますます優れた作品を残し、101歳の長寿を全うするまで名作を生み出し続けたそうです。

    山種美術館では、創立者が土牛氏と家族ぐるみの付き合いだったというだけあり、若年期から晩年期のものまで、土牛氏の作品の変遷もじっくり愉しむことができました。私のイメージとは違う「日本画」の正しい定義もここで教えていただきましたよ。


  • そして私が感じた「かわいい」は、何も動物だけではありません。


  • 上「水蓮」(1955年)、下「三彩観賞」(1966年)。



  • 「三彩観賞」は当時、ある展覧会で土牛が見た陶磁器を描いたもの。
    この二作を見てまず私は「かわいい器!」と引き込まれました。まるで絵ではなく、その器がそこにあるかのように。土牛の器を愛でる心に、この絵を通して、時間を超えて共感しました。

    土牛は、絵の制作において写生を重視したといいます。たびたび一つの対象を、何日もかけて写生したそうです。「しみじみとした愛と画心を覚えて、その気持ちでもって描いて行けば技巧の上で稚拙はあっても、いい味わいのものが出来る」と絵のそばに書いてありましたが、この気持ちこそが絵から伝わり、私たちに親しみを覚えさせてくれるものなんですね。

    「三彩観賞」の、少し中心が左にずれた絵から伝わるように、土牛の眼差し、つまり画角がまた面白いのです。



  • こちらは「茶室」(1963年)という一枚。
    四角のなかに直線が何本も行き交い、平面的な絵にも見えるけれど、少し焦点をずらすと立体的に見えてきませんか。特に、手前にある木の柱が面白い。確かに茶室なんだけれど、タイトルを知らずに見ていると、一瞬何かと考えてしまいそうです。
    解説によると土牛は、色と線の構成美や洗練された簡潔さに感銘を受けたそう。


  • そして極めつけがこちら。


  • 「鳴門」(1959年)という作品です。
    瀬戸内海の鳴門海峡で、船の上から写生をし、写生をもとに描き上げたという一枚。
    二度と同じ瞬間はおとずれない、海といういきものの一瞬を、こんなに生き生きととらえ、そして優しい薄い緑色で描いたところに、本当に感銘を受けました。
    この濃淡など、ぜひ間近で見てもらいたい!


  • こんなに大きいんですよ。


  • そして、土牛の代表作の一つ「醍醐」(1972年)。


  • 桜の名所として知られる京都の醍醐寺のしだれ桜を描いた作品。
    そばにある解説には「土塀のしだれ桜に極美を感じ、数日間通って写生した」とありましたが、こちらも、花よりも幹が画角の中心にあるところが土牛ならではだと思いました。 ここだけぱぁっと明るくなるような魅力を持った一枚で、ひかりのような桜の薄紅色や、幹の質感にとても惹かれました。

    そしてこの桜は、今や京都と山種美術館を繋ぐものに。
    ここに描かれた醍醐寺の枝垂れ桜を組織培養によって増殖された苗、つまり原木のクローン桜が、この展覧会にあわせて山種美術館に植樹されたのです。その桜は山種美術館正面玄関の右手に。花をつけるまではもう少し年数がかかるだろうとのことでしたが、なんという素敵なご縁なんでしょう!


  • あたたかい余韻にひたりながら美術館を後にし、やってきたアフタヌーンティー。
    セルリアンタワー東急ホテルの日本料理「Japanese Cuisine 桜丘」です。




  • 席に着くと、あの「醍醐」が絵葉書になって待っていた!
    このコラボレーションプランだけの粋なプレゼント。ますます会話も弾みそう。



  • そしてお楽しみの「桜丘アフタヌーンティー」!
    サンドイッチやスコーンではなく、鰻や海老天ののった一口寿司。スイーツは、わらび餅や羊羮といった和菓子に日本酒のチョコレート。お皿には、生麩やお魚などのおばんざいが並びます。なるほどこれが日本料理式アフタヌーンティー。見てるだけで幸せです。




  • お茶のほうは「深蒸し煎茶」「信楽の熟成ほうじ茶」「奥八女 熟成煎茶」「抹茶黒豆玄米茶」 「五ヶ瀬 和烏龍茶」「奥八女 和紅茶」など、珍しいお茶がずらり。しかもアフタヌーンティーですから、何杯でも楽しめるのが嬉しい。一通りいただいたら、甘いものに合わせて抹茶をいただきました。中国茶にハーブティー、コーヒーも豊富に揃っているのでついつい長居してしまいました。



  • 私はいつも誰かと映画を観に行くと、そのあと映画について語らう時間を必ず設けたくて、お茶や食事の約束をしています。もちろん一人でも、美術鑑賞のあとのお茶は余韻に浸ったり、感情を整理したり、背景を調べたりする大事な時間。
    アートは言語化するのが難しい部分もありますが、「あの作品のここが好き」を鮮明に思い出すだけでもいい。見たものや感じたことを自分の中にそっと置いておく時間を、こんな風に過ごせたらベスト! というシチュエーションが、ここにありました。

    何年後かに山種美術館の桜が咲いたら、また今日のことを思い出すでしょう。




  • PHOTO:魚住誠一


セルリアンタワー東急ホテル 山種美術館とのコラボレーション企画

  • 「山種美術館」(渋谷区広尾)のペア入場券が付いた「日本料理店での和風アフタヌーンティープラン」。スイートルーム宿泊プランもございます。

    期間:2022年3月31日(木)※一部除外日あり

    詳しくはコチラ


山種美術館


  • 1966( 昭和 41) 年、日本初の日本画専門の美術館として開館。
    近代・現代日本画を中心に、6点の重要文化財を含む約1800点を所蔵する美術館です。

  • 住所:〒150-0012 東京都渋谷区広尾3-12-36
    開館時間:午前10時~午後5時 (入館は閉館時間の30分前まで)
    ※今後の状況により会期・開館時間等は変更する場合がございます。美術館Webサイトにてご確認ください。

    山種美術館Webサイトはコチラ


展覧会情報

  • 奥村土牛 《醍醐》 1972(昭和47)年 紙本・彩色 山種美術館

【開館55周年記念特別展】奥村土牛 ―山﨑種二が愛した日本画の巨匠 第2弾―

  • 会期:2021年11月13日(土)~2022年1月23日(日)
    休館日:月曜日(1/10(月・祝)は開館、1/11(火)は休館)
    主催:山種美術館、日本経済新聞社

    山種美術館開館55周年を記念し、当館がその代表作を多数所蔵している日本画家・奥村土牛[1889-1990]の展覧会。
    本展では、《醍醐》や《鳴門》などの代表作をはじめ、活躍の場であった院展出品作を中心に、全69点を展示。
    初期から晩年にいたる土牛100年の足跡をたどり、画業へ専心し、今なお人々から愛されている土牛の作品を紹介します。

  • 上村松園 《春芳》 1940(昭和15)年 絹本・彩色 山種美術館

【開館55 周年記念特別展】上村松園・松篁 ― 美人画と花鳥画の世界―

  • 会期:2022年2月5日(土)~4月17日(日)
    休館日:月曜日(3/21(月)は開館、3/22(火)は休館)
    主催:山種美術館、日本経済新聞社

    山種美術館開館55周年を記念した展覧会の最後を飾るのは、山種美術館と縁が深い日本画家・上村松園(しょうえん)[1875-1949]と、その長男で生誕120 年を迎える上村松篁(しょうこう)[1902-2001]の展覧会。
    本展では、当館の所蔵する松園の美人画18 点、松篁の花鳥画9 点が、初めて一堂に会します。また、松園・松篁の母子2代の日本画とあわせて、松園と同時代に活躍した鏑木清方(きよかた)や伊東深水(しんすい)の美人画、松篁の長男である上村淳之(あつし)ほか、同時代に活躍した画家たちによる優品の数々をご紹介します。

三原勇希コラム「私流アート鑑賞」

三原勇希


  • 三原勇希(タレント/キャスター)
    1990年4月4日生まれ。大阪府出身。
    ティーン向けファッション誌「nicola」でデビューし、tvkテレビ神奈川「sakusaku」4代目MCを務める。その後、様々な音楽番組やNTV「シューイチ」などに出演。現在はJ-WAVE「ROPPONGI PASSION PIT」ナビゲーター、スペースシャワーTV「ヨルジュウ♪」VJでレギュラー出演。音楽、映画、スポーツ、ファッションと多才多趣味を活かし、テレビ・ラジオ・雑誌などでマルチに活躍中。
    【Official HP】
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